歴史的に最も古くから知られる感染症といわれるハンセン病は、今では治療法が確立し、最も感染力の弱い感染症ともいわれている。ブラジル・Fundacao Oswaldo CruzのCamila Silveira Silva Teixeira氏らは、ハンセン病の発生は世界的には減少傾向にあるが、低中所得国では依然として対策が必要な感染症であるとして、同国における新規症例の状況と家庭内感染の実態を、1億人規模の住民ベースのコホート研究から明らかにした。ハンセン病患者の家庭内接触者(とくに多菌型ハンセン病患者が家族にいる接触者、および高齢の接触者)は、ハンセン病のリスクが増大する可能性が示唆されたという。結果を踏まえて著者は「コンタクトスクリーニング(接触者の検出)といった保健衛生上の介入が、とくにそのような集団をターゲットとして必要と思われる」とまとめている。JAMA dermatology誌オンライン版2020年4月15日号掲載の報告。
研究グループは、ハンセン病と診断された患者の家庭内接触者における、ハンセン病の新たな症例検出率を推定し、関連するリスク因子を調べる検討を行った。
本研究は、100 Million Brazilian Cohortに登録された家族と全国ハンセン病レジストリをリンクした住民ベースコホート研究で、2007年1月1日~2014年12月31日に集められたデータを解析した。
ハンセン病と診断された患者の家庭内接触者を家族単位で、1人目のハンセン病罹患家族(プライマリ家族)が検出および登録された時期から2人目の罹患家族が検出されるかを、2014年12月31日まで追跡した。プライマリ家族の臨床的特性と、家庭内接触者の社会人口統計学的因子を踏まえて、2018年5月~12月にデータの解析を行った。
主要評価項目は、リスク集団である家庭内接触者10万(リスク人年)当たりの新たなハンセン病症例の推定検出率であった。また、2人目の罹患家族の発生と曝露リスク因子の関連を、州および世帯特有のランダム効果を考慮したマルチレベル混合効果ロジスティック回帰法を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・ハンセン病患者1万7,876例が検出され、その家庭内接触者4万2,725例(女性2万2,449例[52.5%]、平均年齢22.4歳[SD 18.5])を対象に検討が行われた。
・家庭内接触者における新規症例の検出頻度は、10万リスク人年当たり636.3例(95%信頼区間[CI]:594.4~681.1)であった。15歳未満では、10万リスク人年当たり521.9例(95%CI:466.3~584.1)であった。
・発症の関連オッズ比(OR)が高かった因子は、プライマリ家族が多菌型ハンセン病に罹患している場合であった(補正後OR:1.48、95%CI:1.17~1.88)。
・家庭内接触者が50歳以上の場合、リスクの増大が認められた(補正後OR:3.11、95%CI:2.03~4.76)。
・ハンセン病の検出と、非識字または就学前の教育レベルには、負の相関がみられた(補正後OR:0.59、95%CI:0.38~0.92)。
・小児の家庭内接触者では、男児でリスクが高いことが認められた(補正後OR:1.70、95%CI:1.20~2.42)。
(ケアネット)