統合失調症に対する薬物療法と心理療法の2つの治療戦略の効果について意義のある比較が可能か確認するため、ドイツ・ミュンヘン工科大学のIrene Bighelli氏らが、患者および研究の特性を調査した。Schizophrenia Bulletin誌2020年4月10日号の報告。
陽性症状を有する統合失調症患者を対象とした抗精神病薬治療と心理療法に関する最近の2つのメタ解析に含まれるすべてのランダム化比較試験を、EMBASE、MEDLINE、PsycINFO、Cochrane Library、ClinicalTrials.govより検索した。薬物療法と心理療法の違いを分析するために、Wilcoxon-Mann-Whitney検定およびカイ二乗検定を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・メタ解析には、抗精神病薬治療の研究80件(1万8,271例)と心理療法の研究53件(4,068例)が含まれた。
・心理療法の研究には、以下の特徴が認められた。
●重症度の低い患者の多さ(p<0.0001)
●罹病期間の短さ(p=0.021)
●持続期間の長さ(p<0.0001)
●抗精神病薬併用介入の実施(p<0.0001)
●アウトカム評価の盲検化を含む一部でのバイアスリスクの高さ(p<0.0001)
●公的資金の出資頻度の高さ(p<0.0001)
・抗精神病薬治療の研究には、以下の特徴が認められた。
●サンプルサイズの大きさ(p<0.0001)
●研究センターの規模が大きい(p<0.0001)
●男性患者の多さ(p=0.0001)
●入院患者の多さ(p<0.0001)
●高齢な患者の多さ(p=0.031)
●診断運用基準のより頻繁な使用(p=0.006)
●製薬会社の支援
・両研究ともに、利益相反の差は認められなかった(p=0.24)。
著者らは「研究間の主な違いは、心理療法ではバイアスリスクが高く、薬物療法ではより重篤な患者が含まれていたことだった。そのため、ネットワークメタ解析を検討する前に、患者および研究の特性を注意深く考慮する必要がある。精神薬理学者と心理療法士は、競合するのではなく、患者の利益のために治療の最適化を目指すべきである」としている。
(鷹野 敦夫)