うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への移行について、その時間的パターンと予測因子を調査するため、フィンランド・ヘルシンキ大学のIlya Baryshnikov氏らは、レジスターベースのコホート研究を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年5月8日号の報告。
うつ病から双極性障害や統合失調症への移行は初年度が最も高い
1996~2011年に精神科病棟へ初回入院したすべてのうつ病患者4万3,495例を15年間フォローアップした。診断転換の累積発生率および部分分布ハザード比(SHR)は、累積発生関数およびFine-Gray部分分布モデルを用いて定義した。
うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への診断転換を調査した主な結果は以下のとおり。
・15年間の診断転換の累積発生率は以下のとおりであった。
●全体:11.1%(95%CI:10.7~11.6)
●双極性障害:7.4%(95%CI:7.0~7.8)
●統合失調症:2.5%(95%CI:2.3~2.7)
●統合失調感情障害:1.3%(95%CI:1.1~1.4)
・発生率が最も高かったのは、初年度であった。
・精神病性うつ病は、軽度うつ病よりも診断転換リスクが高かった。
●双極性障害:SHR=2.0(95%CI:1.5~2.7)
●統合失調症:SHR=5.3(95%CI:3.3~8.7)
●統合失調感情障害:SHR=10.6(95%CI:4.0~28.4)
・女性、重症うつ病、パーソナリティ障害の合併は、双極性障害への診断転換の予測因子であった。
・一方、若年および男性は、精神病性疾患への診断転換の予測因子であった。
著者らは「初回入院となったうつ病患者の約9人に1人は、15年の間に他の精神疾患へ診断転換が行われており、そのリスクは最初の1年以内で最も高くなる。精神病性うつ病患者は、とくに脆弱であることが示唆された。また、精神病性疾患への診断転換は、双極性障害よりも早く起こる可能性がある。男性では、精神病性疾患への転換リスクが高いのに対し、女性、再発うつ病エピソード、重度の全体的機能障害、パーソナリティ障害では、双極性障害への転換リスクが高まる」としている。
(鷹野 敦夫)