クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された104例について臨床的特徴を分析した単一施設・後ろ向き研究の結果が発表された。自衛隊中央病院のチームによるもので、これまで同病院のサイトで公開されたまとめを論文化したものが、2020年6月12日にLancet Infectious Diseases誌オンライン版に掲載された。
2020年2月11日~25日に自衛隊中央病院に入院したCOVID-19感染者を対象とし、臨床記録、検査データ、放射線検査の所見を分析した。追跡期間は、退院もしくは2月26日のどちらか早い日まで。期間中にダイヤモンド・プリンセス号の乗客・乗員3,711人が船内の検疫における咽頭スワブのPCR検査を受け、SARS-CoV-2陽性となった患者のうち、合意のとれた104例が対象となった。
ダイヤモンド・プリンセス号から搬送されたCOVID-19感染者の重症度は、以下のように定義した。
・臨床徴候および症状なし:無症候性
・重い肺炎(呼吸困難、頻呼吸、SpO2<93%、および酸素療法の必要性)あり:重症
・上記以外:軽症
追跡終了時に、無症候性を含むさまざまな重症度の患者における入院時の臨床的特徴を比較し、無症候性と臨床症状のある患者の疾患の進行に関連する要因について、単変量解析を用いて特定した。
ダイヤモンド・プリンセス号から搬送されたCOVID-19感染者の臨床的特徴を分析した主な結果は以下のとおり。
・参加者の年齢は25~93歳、年齢中央値は68歳(IQR:47〜75)だった。
・男性が54例(52%)、東アジアからの参加者が55例(53%)と最も多かった。
・観察期間は3~15日(中央値10日、IQR:7〜10)だった。
・52例(50%)に何らかの併存症があった。
・重症度は以下の通り(いずれも入院時/全観察期間)だった。
無症候性:43例(41%)/33例(32%)
軽症:41例(39%)/43例(41%)
重症:20例(19%)/28例(27%)
入院時に無症候性だった43例のうち、観察期間終了時まで無症状だった33例と症状の発現した10例を比較したところ、最後まで無症状だった33例中17例は入院時の胸部CTの所見に異常が見られ(原著論文で検査画像を提示)、うち3例は酸素療法を必要とするまで悪化した。症状発現の有無に性別、年齢、併存症による有意差は見られなかった。
観察期間終了時における軽症例(43例)と重症例(28例)との比較では、重症例のほうが高齢(60歳 vs.73歳、p=0.028)で、入院時の胸部CT異常の割合(65% vs.86%、p=0.062)とリンパ球減少の割合(23% vs.57%、p=0.0055)も重症例のほうが高かった。
まとめとして自衛隊中央病院チームは、ダイヤモンド・プリンセス号から搬送されたCOVID-19感染者の分析結果からは、LDH高値が有症状の予測因子となり、高齢、胸部CT画像のすりガラス影、リンパ球減少が疾患進行の潜在的リスク因子だと示唆している。
(ケアネット 杉崎 真名)