精神疾患は、小児期や青年期にしばしば発症する。小児精神疾患の治療に適応を有する向精神薬はさまざまあり、適応外での使用が往々にして行われる。しかし、これら向精神薬の副作用については、発達途上期間中であることを踏まえ、とくに注意が必要である。イタリア・パドヴァ大学のMarco Solmi氏らは、小児および青年の精神疾患に対する抗うつ薬、抗精神病薬、注意欠如多動症(ADHD)治療薬、気分安定薬を含む19カテゴリ、80種の向精神薬における78の有害事象を報告したランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析およびメタ解析、個別のRCT、コホート研究をシステマティックに検索し、メタ解析を行った。World Psychiatry誌2020年6月号の報告。
主な結果は以下のとおり。
・ネットワークメタ解析9件、メタ解析39件、個別のRCT90件、コホート研究8件が抽出され、分析対象患者は33万7,686例であった。
・78の有害事象について20%以上のデータを有していた薬剤は以下のとおりであった。
●6種の抗うつ薬:セルトラリン、エスシタロプラム、パロキセチン、fluoxetine、ベンラファキシン、vilazodone
●8種の抗精神病薬:リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ルラシドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、アセナピン
●3種のADHD治療薬:メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン
●2種の気分安定薬:バルプロ酸、リチウム
・これらの薬剤のうち、カテゴリごとにより安全なプロファイルを有していた薬剤は以下のとおりであった。
●抗うつ薬:エスシタロプラム、fluoxetine
●抗精神病薬:ルラシドン
●ADHD治療薬:メチルフェニデート
●気分安定薬:リチウム
・入手可能な文献より、安全性の懸念が最も高かった薬剤は以下のとおりであった。
●抗うつ薬:ベンラファキシン
●抗精神病薬:オランザピン
●ADHD治療薬:アトモキセチン、グアンファシン
●気分安定薬:バルプロ酸
・カテゴリごとに最も関連が認められた有害事象は以下のとおりであった。
●抗うつ薬:悪心・嘔吐、有害事象による中止
●抗精神病薬:過鎮静、錐体外路症状、体重増加
●ADHD治療薬:拒食、不眠
●気分安定薬:過鎮静、体重増加
著者らは「本結果は、臨床診療、研究、治療ガイドライン作成を行ううえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)