入院中の高齢患者に対するせん妄予防への薬理学的介入の効果について、スペイン・Canarian Foundation Institute of Health Research of Canary IslandsのBeatriz Leon-Salas氏らがメタ解析を実施し、包括的な評価を行った。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2020年9~10月号の報告。
2019年3月までに公表された、65歳以上の入院患者を対象としたランダム化比較試験を、MEDLINE、EMBASE、WOS、Cochrane Central Register of Controlled Trialsの電子データベースよりシステマティックに検索した。事前に定義した基準を用いて研究を抽出し、それらの方法論的な質を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・各データベースより抽出された1,855件から重複を削除し、1,250件の評価を行った。
・メタ解析には、以下の25件のランダム化比較研究が含まれた。
●抗てんかん薬(1件、697例)
●抗炎症薬(2件、615例)
●抗精神病薬(4件、1,193例)
●コリンエステラーゼ阻害薬(2件、87例)
●催眠鎮静薬(13件、2,909例)
●オピオイド(1件、52例)
●向精神薬・認知機能改善薬(1件、81例)
●抑肝散(1件、186例)
・プラセボや通常ケアと比較し、せん妄の発生率を減少させた薬剤は、以下のとおりであった。
●オランザピン(RR:0.36、95%CI:0.24~0.52、k=1、400例)
●リバスチグミン(RR:0.36、95%CI:0.15~0.87、k=1、62例)
●デクスメデトミジン(RR:0.52、95%CI:0.38~0.71、I2=55%、k=6、2,084例)
●ラメルテオン(RR:0.09、95%CI:0.01~0.64、k=1、65例)
・デクスメデトミジンのみが、せん妄期間の短縮(0.70日短縮)、抗精神病薬の使用量低下(48%)と関連が認められた。
・死亡率、有害事象、尿路感染症、術後合併症への影響は認められなかった。
著者らは「本メタ解析では、デクスメデトミジンが入院中の高齢患者におけるせん妄の発生率減少と期間短縮に有用であることが示唆された。各研究において、ラメルテオン、オランザピン、リバスチグミンの効果が報告されているが、確固たる結論を導き出すにはエビデンスが不十分である」としている。
(鷹野 敦夫)