心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、認知症発症の潜在的なリスク因子といわれている。しかし、このリスクを定量化するためのメタ解析はこれまで実施されていなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMia Maria Gunak氏らは、一般集団におけるPTSDに関連する将来の認知症リスクを定量化するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年9月15日号の報告。
2019年10月25日までのPTSDと認知症リスクを評価した縦断的研究を、9つの電子データベースより検索した。研究全体の推定値をプールし、ランダム効果と固定効果モデルのメタ解析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・PTSDは、すべての原因による認知症リスクと有意に関連していることが認められた(プールされたハザード比[HR]:1.61、95%CI:1.43~1.81、I2=85.8%、p<0.001、169万3,678例、8研究)。
・プールされたHRは、退役軍人で1.61(95%CI:1.46~1.78、I2=80.9%、p<0.001、90万5,896例、5研究)、一般集団で2.11(95%CI:1.03~4.33、I2=91.2%、p<0.001、78万7,782例、3研究)であった。
・バイアスリスクが高い研究を除外してもなお、PTSDと認知症との間には有意な関連が認められた(HR:1.55、95%CI:1.39~1.73、I2=83.9%、p<0.001、168万4,928例、7研究)。
・ほとんどの研究がレトロスペクティブに実施されており、エビデンスの不均一性は高かった。
著者らは「本研究は、PTSDと認知症リスクの関連を定量化した初めての研究である。PTSDは、すべての原因による認知症の強力かつ潜在的に修正可能なリスク因子であることが示唆された。今後は、潜在的なメカニズムやPTSD治療による認知症予防効果を調査するための研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)