ラピッドサイクラー(RC)では、双極性障害(BD)の重症度リスクが高まるが、1年後に寛解状態を達成した(one-year euthymia:OYE)患者の予後は良好となる。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、精神科クリニックにおけるBDの多施設治療研究(MUSUBI)において、大規模サンプル(2,609例)におけるラピッドサイクラーおよび1年後に寛解状態を達成した患者にある患者の臨床的背景、処方特性について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年9月30日号の報告。
ラピッドサイクラーの抗精神病薬の処方率は1年後に寛解した患者と比べて多い
MUSUBIは、外来クリニック176施設にアンケートを配布し、BD連続症例のカルテをレトロスペクティブに調査した横断的研究である。患者背景、現在のエピソード、臨床的特徴、処方状況に関するデータをアンケートで収集した。OYEの定義は、12ヵ月以上の正常状態とした。
双極性障害患者におけるラピッドサイクラーおよび1年後に寛解状態を達成した患者の臨床的背景などを調査した主な結果は以下のとおり。
・現在のラピッドサイクラーの割合は9.7%であり、女性で有意に高かった。
・ラピッドサイクラー患者は、非ラピッドサイクラー患者と比較し、発症年齢が若く、機能障害を有し、神経発達障害および身体疾患の合併頻度が高かった。
・1年後に寛解状態を達成した患者の割合は19.4%であり、女性、高齢、職業的地位の高さ、自殺念慮、精神症状、人格障害、アルコールまたは薬物乱用の低さと関連が認められた。
・気分安定薬は80%以上、抗精神病薬は50%の患者に処方されていた。これらの処方率は、ラピッドサイクラーでより多く、1年後に寛解状態を達成した患者でより少なかった。
・抗うつ薬の処方率は、ラピッドサイクラーよりも1年後に寛解状態を達成した患者のほうが低かった。
著者らは「RCとOYEは、相反する特性を有するが、パラメータの詳細に特色が認められた。これら相反する臨床的特徴の背景や特性を理解することは、BDの進行を予測するうえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)