医療機関・高齢者施設等において、無症状者に対し幅広く検査を実施する場合の検査法として、検体プール検査法と抗原簡易キットが新たに行政検査として実施可能となった。1月22日の事務連絡で都道府県等に通知された。併せて同日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検体プール検査法の指針」が公表され、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第3版)」ではこれらの変更が反映されている。
地域の感染状況に応じ、医療機関・高齢者施設での一斉検査実施を要請
厚生労働省では、感染者が多数発生している地域やクラスターが発生している地域(とくに直近 1 週間で中規模[5人以上を目安]以上のクラスターが複数発生している地域)においては、その期間、医療機関、高齢者施設等に勤務する者、入院・入所者全員を対象に、一斉・定期的な検査を積極的に実施するよう要請を行っている
1-3)。今回、医療機関・高齢者施設等において幅広く検査を実施する場合の検査法として、
1)複数の検体を混合して同時にPCR検査等を実施する検体プール検査法
2)結果が陰性であった場合も感染予防策の継続を徹底すること等一定の要件下における無症状者に対する抗原簡易キットの使用
の2つが、行政検査として新たに実施可能となった
4)。
検体プール検査法とは?
検体プール検査法は、陽性率の低い集団に対して効率的に検体をスクリーニングする目的で、複数の検体をまとめて検査を行う方法。一般に個別検体を用いた検査と比較し感度・特異度が下がることから、検査体制に余裕がある場合には個別検査が推奨される。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検体プール検査法の指針」
5)では、実際に検査を実施するにあたっての指針を下記7項目についてまとめている:
1) 適切な検査機器と試薬について
2) 検体プール検査法実施前に必要となる精度管理
3) リスク評価と検体の適正管理の実施について
4) 適正なプール化検体の数および試料の種類について
5) 適正な対象集団の設定について
6) プール検査を実施した場合の結果の解釈について
7) その他
抗原簡易キットとは?
抗原定性検査については、これまで無症状者に使用することは推奨されてこなかった経緯がある。しかし、感染拡大地域の医療機関および高齢者施設等において、PCR検査等による実施が困難な場合に抗原定性検査により幅広く検査を実施することは、重症化リスクの高い者が多い医療機関や高齢者施設等における感染拡大を防止する観点から有効であるとの観点から、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第3版)」
6)では、「感染拡大地域の医療機関や高齢者施設等において幅広く検査を実施する際にスクリーニングに使用することは可能」と変更された。
無症状者に対する抗原定性検査は、以下の1)~4)のいずれにも該当することを実施要件としている
4):
1)医療機関または高齢者施設等の職員、入院・入所者(新規の入院・入所者を含む)等に対して幅広く実施する検査であること
2)とくに検体中のウイルス量が少ない場合には、感染していても結果が陰性となる場合があるため、陰性の場合でも感染予防策の継続を徹底すること
3)結果が陽性であった場合であり、医師が必要と認めるときは、PCR検査、抗原定量検査等を実施すること(※)
4)実施した実績・結果について厚生労働省に報告すること
※検査結果の解釈・注意点については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」を参考にすること。
その他、対象者の考え方、行政検査で用いることができる抗原簡易キットと入手方法についても、1月22日付けの事務連絡
4)に明記されている。
■参考文献・参考サイトはこちら
1)厚生労働省.令和2年11月16日付け事務連絡:「医療機関、高齢者施設等の検査について(再周知)」
2)厚生労働省.令和2年11月19日付け事務連絡:「高齢者施設等への重点的な検査の徹底について(要請)」
3)厚生労働省.令和2年11月20日付け事務連絡:「クラスターが複数発生している地域における積極的な検査の実施について(要請)」
4)厚生労働省.令和3年1月22日付け事務連絡:医療機関・高齢者施設等における無症状者に対する検査方法について(要請))」
5)「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検体プール検査法の指針」
6)「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第3版)」
(ケアネット 遊佐 なつみ)