4月から医師の初期・後期臨床研修をひかえ、研修医の成長に必要なことは何であろう。研修医にとって十分な自習時間は、専門能力開発にとって重要であり、臨床知識の習得と自習時間は正の関係にあるとされている。2024年以降、わが国で研修医の義務勤務時間が制限されることもあり、水戸協同病院総合診療科の長崎 一哉氏らのグループは、研修医の勤務時間と学習習慣との関連を初期臨床研修医の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を基に評価を行った。
調査方法
2020年1月20日~26日までGM-ITEを受講した全国5,590人の研修医を対象に横断研究にて実施。参加者へは、平均勤務時間と自習時間、および性別、卒後学年、当直回数、平均担当入院患者数を含む共変量についてアンケートで質問した。従属変数は1日あたりの自習時間であり、独立変数は1週間あたりの勤務時間とした。比例オッズ回帰分析を用いて、自習時間と勤務時間の間の関連を調べた。
約8割の研修医の自習時間は60分未満
6,164人の研修医のうち5,590人(528病院)を分析した。これら研修医のうち2,837人(50.8%)は初期研修医で、1,769人(31.6%)は女性医師だった。
自習時間は、1~30分が2,067人(37.0%)、31~60分が2,330人(41.7%)、61~90分が788人(14.1%)、91分以上が166人(3.0%)、なしが239人(4.3%)だった。
勤務時間については、カテゴリー1(45時間未満)が133人(2.4%)、カテゴリー2(45〜50時間未満)が514人(9.2%)、カテゴリー3(50〜55時間未満)が827人(14.8%)、カテゴリー4(55〜60時間未満)が832人(14.9%)、カテゴリー5(60〜65時間未満)が1,047人(18.7%)、カテゴリー6(65〜70時間未満)が754人(13.5%)、カテゴリー7(70〜80時間未満)が676人(12.1%)、カテゴリー8(80時間以上)が807人(14.4%)だった。
性別、卒後学年、当直回数、および平均担当入院患者数を調整した後、研修医の自習時間はカテゴリー5よりもカテゴリー1~4の方が短かった。対照的にカテゴリー6~8とカテゴリー5の間で自習時間にほとんど、またはまったく違いはみられなかった。
質を維持するための今後の課題
この研究では、勤務時間が週60時間未満の研修医は、週60~65時間の研修医よりも自習時間が短かった。この結果は、研修期間中の自由時間が必ずしも、より多くの自習時間に関連しているとは限らないことを示唆している。また、モチベーションの低い研修医が勤務時間の短い病院を選んでいるかもしれない。これらの結果は、本邦における勤務時間制限は、研修医の自習時間を短縮する可能性を示している。よって、研修病院は、オンライン教育と有益な学習環境などを提供することで、研修医の学習習慣を改善させる方策を取る必要がある。2024年以降勤務時間制限がされる中で研修医の質を維持するために、研修プログラムは研修医の自習時間を低下させないような方策(オンライン教育と院内学習環境の構築など)をとる必要がある。
(ケアネット 稲川 進)