日常生活に欠かせない環境資源の1つである歩道は、身体活動を促進するうえで重要なポイントとなる。しかし、先進国においても歩道の設置率は十分とはいえない。東京医科歯科大学の谷 友香子氏らは、日本における近隣の歩道環境と認知症リスクとの関連を調査した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年2月19日号の報告。
地域在住の高齢者の人口ベースコホート研究である日本老年学的評価研究の参加者を対象に、3年間のフォローアップ調査(2010~13年)を実施した。公的介護保険制度のデータより高齢者7万6,053人の認知症発症率を調査した。436ヵ所の住宅近隣ユニットの道路面積に対する歩道の割合を、地理情報システムを用いて算出した。認知症発症率のハザード比(HR)は、マルチレベル生存モデルを用いて推定した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は5,310人であった。
・都市部では、歩道割合が最低四分位の地域と比較し、最高四分位の地域における認知症のHRは0.42(95%CI:0.33~0.54)であった(共変量で調整後)。
・土地の傾斜、病院数、食料品店数、公園数、駅数、バス停数、教育レベル、失業率などのその他の近隣要因で連続調整した後でも、HR(0.75、95%CI:0.59~0.94)は統計学的に有意なままであった。
著者らは「都市部においては、歩道の割合が高い地域に住むことと認知症発症率の低さとの関連が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)