せん妄と新規認知症発症との関連は、観察研究によって調査されているが、利用可能なエビデンスを定量的および定性的に評価したレビューは、最近行われていなかった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のJarett Vanz-Brian Pereira氏らは、せん妄と認知症に関連するエビデンスをシステマティックにレビュー、これを厳密に評価したうえで、せん妄発症後の新規認知症発症率を算出するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年2月9日号の報告。
本システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMA(システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目)に従って実施した。65歳以上の高齢入院患者を対象に、せん妄の有無における認知症発症率を比較した英語のエビデンスをMEDLINE、EMBASE、PsycINFOより検索した。メタ解析には、変量効果モデルを用いた。全体のエフェクトサイズは、報告されたイベント数の生データを用いて算出した。バイアスリスクの評価には、Newcastle-Ottawa Quality Assessment scaleを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・適格基準を満たした観察研究は6件であり、フォローアップ期間は6ヵ月~5年の範囲であった。
・対象患者別の内訳は、大腿骨近位部骨折の外科患者4件、心臓外科患者1件、老年科患者1件であった。
・すべての研究において、すでに認知症を発症している患者は除外された。
・プールしたメタ解析において、せん妄を発症した高齢入院患者では、せん妄を発症していない患者と比較し、その後の認知症発症率が約12倍に増加することが明らかとなった(OR:11.9、95%CI:7.29~19.6、p<0.001)。
著者らは「せん妄を発症した高齢入院患者は、その後の認知症発症リスクが高まることが明らかとなった。このことは、せん妄の予防およびその後の認知症モニタリングの重要性を示している。今回のメタ解析では、主に術後患者を対象としており、今後の研究では、内科系ICUを対象としたコホート研究が必要であろう。また、せん妄の期間、重症度、サブタイプが認知症発症リスクに及ぼす影響についての評価も求められる」としている。
(鷹野 敦夫)