遺伝性血管性浮腫患者の支援団体が稼働/遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/20

 

 遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angioedema:HAE)は、主に遺伝子変異が原因で血液中のC1インヒビターの低下などに起因し、体のいたるところで持続する腫れやむくみを繰り返す疾患である。皮膚手足、顔面、生殖器などが腫れた場合は、一見すると「じんま疹」に似ていることがあるが、強いかゆみを伴わないのが特徴だ。特にのどが腫れた場合、呼吸困難となり、生命の危険を来す可能性があり、早期の確定診断が必要だが、本症と診断されずに、日ごろの症状に苦しむ患者も多い。

 こうした患者を救うため、適切な早期診断と診断率向上を目指す一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(略称:DISCOVERY)が、2021年2月8日に設立され、5月16日の「HAE疾患啓発デー」より本格的に稼働を開始した。

わが国のHAE顕在患者は20%

 HAEは、希少疾患であり、わが国の有病率は5万人に1人。国内には診断・治療中の患者が430名程度という報告があるが、推定される国内患者数に対し20%に留まっているという。また、初発から診断までの平均期間につき日本は13.8年、欧米は10年未満と欧米との比較で大きなギャップがある。そのためコンソーシアムでは、HAEと診断されずに症状に苦しむ患者を救うために、本症の診療と向き合っている医療従事者、学会、患者団体、製薬企業などが協働し、それぞれの専門性や創造性を通じて、わが国における適切な早期診断および診断率の向上を目指していく。

3つのワーキンググループで患者を支援

 コンソーシアムでは、HAEと診断されずに症状に苦しむ患者のために、3つのワーキンググループ(WG)を立ち上げて活動を推進する。
〔医療データAI分析WG〕
電子カルテやレセプト、健診データなどを基に、HAEと診断されずに症状に苦しむ患者を特定するための診断支援人工知能(AI)を構築し、そのAIを活用して日常診療での見落とし回避などの仕組みを構築・推進する
〔非専門医診断支援WG〕
HAE非専門医に対する知見提供に加え、HAE専門医コミュニティを構築し、テクノロジーを活用して非専門医が専門医に診断相談をする仕組みを形成・推進する
〔未診断患者向け疾患啓発WG〕
未診断患者が中心となってお互いにコミュニケーションする仕組みの構築、ならびに当該仕組みを介した疾患啓発情報や自己診断支援ツールを提供する

(ケアネット 稲川 進)