日本イーライリリー株式会社は、わが国の片頭痛診療の現状に関する大規模横断的疫学調査を行った。本調査は、日本に居住しかつ片頭痛の診断基準(ICHD-3)に該当するもしくは1年以内に頭痛発作を経験しかつ医師による片頭痛の診断を受けたことがある成人を対象に、わが国おける片頭痛の診断状況、治療パターン、および治療の妨げに関して、記述的に評価することを目的に行われ、その結果を第62回 日本神経学会学術大会で発表した。
片頭痛のある17,071人を調査
片頭痛は、1次性頭痛の中でも臨床的に重要な疾患で、典型的には拍動性の中等度から重度の頭痛発作が繰り返し生じ、4~72時間にわたり発作が持続する。頭痛に加えて悪心、嘔吐、光過敏や音過敏などを伴うことが多く、日常動作で頭痛が増悪するため生活に大きな支障を来す。わが国における片頭痛の有病率は8.4%[男女比(女/男):約3.6]であり、男女とも20~50歳代の勤労世代に多くみられることから、患者の日常生活だけでなく社会生活にも影響を及ぼす疾患とされている。
本調査には、片頭痛の症状がある17,071人(平均年齢41歳、男:女=33.5%:66.5%、ICHD-3診断基準を満たした人の割合:82.2%)が登録された。
調査でわかった過去3ヵ月における月あたりの平均頭痛日数は次の通り。
【平均頭痛日数/月:人数(比率)】
・0~3日:11,498人(67.4%)
・4~7日:2,714人(15.9%)
・8~14日:1,608人( 9.4%)
・15日以上:1,251人( 7.3%)
また、片頭痛のために受診を受け、治療を行った医師の主な診療科割合は次の通り。
【診療科の割合】
・かかりつけ医・内科医:59.9%
・脳神経外科医:26.7%
・頭痛専門医:13.7%
・脳神経内科医:12.3%
予防治療薬を使用している人は1割未満
今回の調査でわかったわが国における片頭痛診療の現状として、
・これまで1度でもOTC(一般用医薬品)を使用したことがある:80.4%
・現在OTCを使用している:75.2%
・これまで片頭痛のために医療機関を受診したことがある:57.4%
・医師による片頭痛の診断を受けたことがある:56.6%
・過去1年に片頭痛のために医療機関を受診した:39.7%
・現在NSAIDsが処方されている:36.7%
・これまでトリプタンを使用したことがある:20.1%
・現在トリプタンを使用している:14.8%
・これまでに予防治療薬を使用したことがある:10.2%
・現在予防治療薬を使用している:9.2%
との回答を得た。調査により片頭痛症状をもつ人の42.6%は医療機関を1度も受診していないことが判明した。また、片頭痛の急性期治療薬について、全体の87.1%の人は現在OTCを含む急性期治療薬を用いて治療していたが、トリプタンで治療している人は全体の14.8%だった。予防治療薬について、予防治療薬の処方の対象となる人は全体の29.0%だったが、現在予防治療薬で治療している人はわずか9.2%だった。
片頭痛のある人に適切な医療の実現を
この調査のアドバイザーである平田 幸一氏(日本頭痛学会 代表理事、獨協医科大学 副学長)は、「この調査はわが国における片頭痛医療の満たされていない患者ニーズを浮き彫りにしている。新しい片頭痛の治療薬開発が進んでいる日本において、片頭痛の診断、治療パターン、および医療ニーズを理解することが大変重要で、片頭痛のある人に適切な医療を求めるように啓発し、医師が適切な治療選択肢を患者に提案していくことが急務」とコメントを寄せている。
同社では今後も調査結果を検証し、学会や論文などで発表を行っていくとしている。
(ケアネット 稲川 進)