地域コミュニティにおけるうつ病に対する効果的な対策を検討するうえで、国や文化圏において、うつ病に関連する個人的および社会経済的要因を包括的に特定する必要がある。しかし、日本および東洋諸国の中年住民を対象とした研究は、十分ではない。慶應義塾大学の吹田 晋氏らは、東洋の日本における中年住民のうつ病に関連する要因を特定するため、横断研究を行った。Medicine誌2021年5月14日号の報告。
西日本の地方自治体で生活する40~59歳のすべての地域住民を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートには、人口統計学的特徴、心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因に関する項目を含めた。まず、うつ病と各因子との関連を分析するため、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を行った。次に、うつ病と関連因子の包括的な関連を特定するため、ロジスティック回帰分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象者数は362人であった(平均年齢:51.5歳、男性:148人)。
・カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定では、多くの心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因がうつ病と有意に関連していることが示唆された。
・ロジスティック回帰分析により、うつ病と有意な関連が認められた因子は以下のとおりであった。
●男性
●首尾一貫感覚(sense of coherence)の低さ
●認知ストレスレベルの高さ
●援助要請行動(help-seeking behavior)の少なさ
●睡眠の質の悪さ
●趣味の欠如
・Nagelkerke R2は、51%であった。
著者らは「多変量解析により、日本における中年期のうつ病は、主に個人の行動的および心理的要因と関連していることが明らかとなった。この結果は、西洋諸国での調査結果と一致している」とし「本結果は、個人の行動的および心理的要因に焦点を当てた東洋文化におけるうつ病予防対策の促進や評価に貢献できるであろう」としている。
(鷹野 敦夫)