抗CGRP抗体エレヌマブによる急性頭痛薬の減少効果

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/08/31

 

 トリプタンやエルゴットなどの片頭痛に特異的な治療薬(migraine-specific medication:MSM)を含む急性期治療薬の過度な使用は、薬物乱用頭痛の出現など健康への悪影響につながる可能性がある。米国・Geisel School of Medicine at DartmouthのStewart J. Tepper氏らは、反復性および慢性片頭痛患者における急性期治療薬(とくにMSM)の減少に対するエレヌマブの効果について調査を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年7月23日号の報告。

 2つのエレヌマブの研究(反復性片頭痛患者955例および慢性片頭痛患者667例を対象とした試験とその後続試験)における二重盲検治療段階のデータを用いて、事後分析を行った。対象患者には、エレヌマブ(70または140mg)またはプラセボの月1回皮下投与を行った。毎日の急性期治療薬(MSMおよび非MSM)の使用については、治療開始4週前(ベースライン期間)から治療期間終了まで電子日誌を用いて記録した。アウトカムは、ベースライン時の急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化、ベースライン時のMSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化、ベースライン時の非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化として、測定を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・すべての急性頭痛薬使用患者のうち、反復性片頭痛患者の60%、慢性片頭痛患者の78%に対し、ベースライン時のMSM使用が確認された。
・反復性片頭痛患者を対象とした研究における二重盲検前と比較した4、5、6ヵ月目の各アウトカムは、以下のとおりであった。
 ●急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化
  プラセボ群:1.5日、エレヌマブ70mg群:2.5日、エレヌマブ140mg群:3.0日
 ●MSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化
  プラセボ群:0.5日、エレヌマブ70mg群:2.1日、エレヌマブ140mg群:2.8日
 ●非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化
  プラセボ群:2.3日、エレヌマブ70mg群:2.6日、エレヌマブ140mg群:2.7日
・慢性片頭痛患者を対象とした研究における二重盲検前と比較した3ヵ月目の各アウトカムは、以下のとおりであった。
 ●急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化
  プラセボ群:3.4日、エレヌマブ70mg群:5.5日、エレヌマブ140mg群:6.5日
 ●MSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化
  プラセボ群:2.1日、エレヌマブ70mg群:4.5日、エレヌマブ140mg群:5.4日
 ●非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化
  プラセボ群:5.9日、エレヌマブ70mg群:6.4日、エレヌマブ140mg群:6.6日
・MSM使用日数の減少効果は、両研究の後続試験においても持続していた。
・エレヌマブは、反復性片頭痛および慢性片頭痛のいずれにおいても、プラセボと比較し、MSM使用患者の1ヵ月当たりのMSM使用日数がベースラインから50%以上、75%以上、100%減少が認められる患者の割合が高かった。

 著者らは「エレヌマブ治療は、反復性片頭痛および慢性片頭痛のいずれにおいても、急性頭痛薬、とくにMSMの使用を有意に減少させ、その効果が持続することが示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)