40代日本人女性、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波の上乗せ効果

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/14

 

 現在、わが国における乳がん検診は、40歳以上に対する2年に1度の乳房X線検査(マンモグラフィ)が推奨されているが、高濃度乳房ではマンモグラフィによる精度低下が指摘されている。一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されるが、有効性評価に関する研究は報告されていない。今回、40代の日本人女性を対象に、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波検査併用による発見率・感度・特異度等を調べた大規模無作為化試験(J-START)の二次解析結果が報告された。東北大学の原田 成美氏らによるJAMA Network Open誌8月18日号への報告より。

 J-START試験は、40代日本人女性を対象に、マンモグラフィ受診群を対照群、マンモグラフィ検診に超音波検査を加えた群を介入群として、両群に無作為に割り付け、初回とその2年後に同じ検診を受診する無作為化比較試験。第1報として初回検診における感度、特異度、がん発見率についてLancet誌に2016年1月に報告され1)、今回の第2報では「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2007~20年に宮城県のスクリーニングセンターから登録された1万9,213人の女性(平均年齢:44.5 [SD:2.8]歳)のデータが分析された。
・9,705人が介入群、9,508人が対照群に無作為に割り付けられた。
・1万1,390人(59.3%)が、不均一高濃度または極めて高濃度の乳房を有していた。
・全体で130のがんが発見され、感度は介入群の方が対照群よりも有意に高かった(93.2%[95%CI:87.4~99.0%] vs.66.7%[54.4~78.9%]、p<0.001)。
・乳房構成ごとに感度をみると、高濃度乳房(介入群93.2%[85.7~100.0%] vs.対照群70.6%[55.3~85.9%]、p<0.001) および非高濃度乳房(介入群93.1%[83.9~102.3%] vs.対照群60.9%[40.9~80.8%]、p<0.001)で同様の傾向が観察された。
・1,000回のスクリーニング当たりの中間期がん発生率は、対照群と比較して介入群で低かった(0.5 cancers [0.1~1.0] vs. 2.0 cancers [1.1~2.9]、p=0.004)。
・介入群において、超音波検査のみで検出された浸潤がんの割合は、高濃度乳房(82.4%[56.6~96.2%] vs.41.7%[15.2~72.3%]、p=0.02)および非高濃度乳房(85.7%[42.1~99.6%] vs. 25.0%[5.5~57.2%]、p=0.02)でマンモグラフィ単独の場合よりも有意に高かった。
・ただし、マンモグラフィまたは超音波検査のみの感度は、両群のすべての乳房密度で80%を超えなかった。
・対照群と比較して、特異度は介入群で有意に低かった(91.8%[91.2~92.3%] vs.86.8%[86.2~87.5%]、p<0.001)。
・対照群と比較して、要精検率(13.8%[13.1~14.5%] vs.8.6%[8.0~9.1%]、p<0.001)および生検率(5.5%[5.1~6.0%] vs.2.1%[1.8~2.4%]、p<0.001)は、介入群で有意に高かった。

 研究者らは、この結果は超音波検査の併用が、高濃度乳房と非高濃度乳房どちらにおいても初期段階および浸潤性のがんの検出を改善する可能性を示唆しているとし、乳腺濃度によらず、40〜49歳の女性の乳がんスクリーニング手法として考慮されるべきではないかとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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