EGFRおよびHER2のexon20挿入変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の2〜4%である。しかし、その予後は不良かつ治療も困難で、exon20への非特異的な治療の無増悪生存期間(PFS)は3〜7ヵ月とされる。
そのような中、EGFR-MET二重特異性抗体amivantamab、DZD9008、mobocertinibなど、EGFRおよびHER2のexon20挿入変異陽性NSCLCの新薬開発が進んでいる。
欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)では、汎HER-TKIであるpoziotinibのマルチコホート試験ZENITH20の一部結果が発表され、HER2 exon20挿入変異への有力な成績が示された。
ZENITH20試験は、7つのコホートからなるマルチコホート試験である。今回のESMO2021では、コホート4のHER2 exon20挿入変異NSCLCの結果が発表されている。
・対象:HER2 exon20挿入変異陽性のNSCLC
・介入:初回登録poziotinib16mg/日、後続登録poziotinib 8mgx2/日
・評価項目:
[主要評価項目]奏効率(ORR)
[副次評価項目]病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、安全性など
ORR閾値:95%信頼区間の下限が20%以上
今回の発表は、初回登録のpoziotinib16mg/日投与例(n=48)の解析
主な結果は以下のとおり。
・主要評価項目のORRは43.8%(95%CI:29.5〜58.8)、DCRは75%(CR1例、PR20例、SD15例)であった。
・腫瘍縮小は88%の症例に認められた。
・DoR中央値は5.4ヵ月であった。
・PFS中央値は5.6ヵ月で、6ヵ月PFS率は42%、12ヵ月PFS率は26%であった。
・poziotinibの新たな毒性は認められなかった。
・治療関連有害事象(TRAE)の発現は100%だが、重篤な事象は10%であった。
・頻度が高い(20%以上)TRAEは、下痢、皮疹、胃炎、爪囲炎など、第2世代EGFR-TKIと同様であった。
poziotinibは、未治療のHER2 exon20挿入変異陽性NSCLCにおいて、臨床的に意味のある効果を示した。また、毒性は既存の報告と同様であり、管理可能なものであった、と発表者は述べた。
(ケアネット 細田 雅之)