双極性障害に対する維持期薬物療法の有効性については、十分明らかとなっておらず、入手可能なデータを更新する必要がある。米国・ニューメキシコ大学のAnastasiya Nestsiarovich氏らは、過去のレビューを更新するため、最新のランダム化比較試験(RCT)を含めたシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2021年9月3日号の報告。
2021年7月までに公表されたリチウム、気分安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬、その他の治療法を含む二重盲検RCTをPubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trialsより検索した。対照群と比較した治療群における新規気分エピソードの発生率は、ランダム効果メタ解析を用いて比較した。各治療による予防効果を表す極性指数(polarity index)を算出した。6ヵ月以上のフォローアップ期間を有する研究を選択した。
主な結果は以下のとおり。
・2,158件中22件が適格基準を満たした。1~12週間安定していた双極性障害患者7,773例は、24~104週間フォローアップされていた。
・向精神薬単剤療法(リチウム、気分安定薬、第2世代抗精神病薬を含む)は、プラセボと比較し、新規双極性障害エピソードの予防に効果的であった(オッズ比[OR]:0.42、95%CI:0.34~0.51、p<0.00001)。
・新規双極性障害エピソードリスクの有意な低下が認められた薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、リチウム、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン持効性剤であった(OR:0.19~0.46)。
・リチウムまたは気分安定薬とアリピプラゾール、divalproex、クエチアピン、オランザピン、リスペリドンとの併用療法は、リチウムまたは気分安定薬の単剤療法と比較し、より効果的であった(OR:0.34、95%CI:0.25~0.55、p<0.00001)。
・積極的な治療は、うつ症状よりも躁症状の予防により有効であった。
・本研究の限界として、多くの試験において治療反応例が豊富な設計、アウトカムの不均一性の高さが挙げられる。
(鷹野 敦夫)