臓器移植後患者における複数の皮膚がん発症リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/10

 

 米国の臓器移植を受けたレシピエント(OTR)における皮膚がんリスクについて、米国・ペンシルベニア大学のMackenzie R. Wehner氏らによる、10年間にわたる電子健康記録(EHR)と医療費支払いデータをレトロスペクティブに解析した結果が報告された。

 移植後に少なくとも1回の皮膚がん治療を受けていたOTRは4.5~13.3%で、そのうち約半数が2年以内に2次皮膚がんを発症しており、約20人に1人が10以上の皮膚がんを発症していたことが明らかになったという。これまでOTRにおける複数原発皮膚がんのリスクに関する報告は限定的であったが、今回得られた結果を踏まえて著者は、「複数の原発皮膚がんリスクが最も高いOTRを特定することが、予防と早期発見のターゲット戦略に寄与する可能性がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年10月20日号掲載の報告。

 研究グループは、検討に用いたデータセットにおける(1)移植後皮膚がんの発症、(2)移植後の初発皮膚がん発症後の2次皮膚がん発症、および(3)10以上の皮膚がん発症について、OTRの経時的リスクとリスク要因を確定するレトロスペクティブなコホート研究を行った。

 使用したデータセットは2つで、2007~2017年のOptumの匿名化されたEHR(患者770万人分)とTruven Health MarketScanの医療費支払いデータセット(患者1億6,100万人分)であった。皮膚がんは、診断+治療コード(基底細胞がん、扁平上皮がん、メラノーマ)で特定。OTRは、4つ以上の臓器移植の診断コードを用いて識別した。データ解析は、2007年1月1日~2017年12月31日に実施された。

 主要評価項目は、使用データセットにおけるOTRの(1)移植後のあらゆる皮膚がんの治療、(2)移植後の初回皮膚がん治療後の2次皮膚がんの治療、(3)10以上の皮膚がん治療の累積リスクとした。また、Wei-Lin-Weissfeldマージンモデルを用いてあらゆる皮膚がんのリスク要因を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・Optumで7,390例のOTR、MarketScanで13万3,651例のOTR関連データを特定した。
・少なくとも1回の皮膚がん治療が認められたのは、Optum OTR群4.5%、MarketScan群13.3%であった。
・また、初回皮膚がん治療後2年時点で、OTRは44.0~57.0%の2次皮膚がん治療のリスクを有しており、10以上の皮膚がん治療を有するリスクが3.7~6.6%に認められた。
・あらゆる皮膚がんに関する統計的に有意なリスク因子は、両データセットにおいては年齢、皮膚がん歴、日光角化症歴などであり、MarketScanのデータセットでは、男性、胸部への移植などであった。

(ケアネット)

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