双極性障害患者は、平均寿命が短く、生物学的な老化が加速している可能性がある。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのJulian Mutz氏らは、双極性障害患者と健康対照者における生理学的加齢に伴う変化の違いについて調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年9月21日号の報告。
UK Biobankにて、2006~10年に37~73歳の50万人以上の参加者を募った。年齢、握力、心血管機能、体組成、肺機能、骨密度との関連を調査するため、一般化加法モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・主要データセットより、27万1,118人(平均年齢:56.04歳、女性の割合:49.60%)のデータを分析した。
・握力、血圧、脈拍、体組成に関して、双極性障害患者と健康対照者との間に有意な差が認められた(標準化平均差最大値:-0.24、95%CI:-0.28~-0.19)。
・肺機能、骨密度、動脈硬化の違いを示すエビデンスは限定的であった。
・最も明らかな加齢に伴う変化の違いは、心血管機能(男女)と体組成(女性のみ)であった。
・双極性障害患者と健康対照者とのこれらの差は、年齢とともに均一に変化するわけではなく、性別により異なっていた。たとえば、男性における収縮期血圧の差は、50歳の-1.3mmHgから65歳の-4.7mmHgへ増加が認められ、女性における拡張期血圧の差は、40歳の+1.2mmHgから65歳の-1.2mmHgへ低下が認められた。
・本検討の限界として、双極性障害のサブタイプ別に分析を行っていない点および他の年齢層で一般化されない可能性があることが挙げられる。
著者らは「双極性障害患者は、健康対照者と比較し、心血管および体組成の測定値に最も顕著な違いが認められた。中年期の心血管および代謝関連のスクリーニングは、潜在的な死亡リスクの抑制に寄与する可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)