うつ病・不安症患者の病欠や職場復帰のパターン

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/25

 

 不安症やうつ病による病欠は、差し迫った公衆衛生上の問題である。ノルウェー科学技術大学のKenneth Sandin氏らは、うつ病および不安症の患者における仕事に焦点を当て、治療前、治療中、治療後の病欠パターンを特定するため、29.5ヵ月に及ぶ縦断的研究を行った。また、これらの軌跡の背景と臨床的特徴との関連も併せて調査を行った。BMJ Open誌2021年9月29日号の報告。

 患者の背景や臨床データは、専門のメンタルヘルスケアクリニックにおける観察研究で実施した患者の自己報告(619例)に基づき収集した。病欠に関する情報は、national registry dataより収集した。軌跡の特定には、潜在成長混合モデルを用いた。背景特性の違いは多項ロジスティック回帰を、臨床的な違いは一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・次の3つの軌跡が特定された。
●レジリエント群:47.7%
●リカバリー群:31.8%
●ハイリスク群:20.5%
・レジリエント群は、期間を通じて病欠が少なかった。
・他の2群は、治療前と同様の軌跡を示し、1年前に病欠が少なかった人では治療開始時に病欠リスクの増加が認められた。
・治療後、リカバリー群は、ほぼ職場復帰が果たされたが、ハイリスク群は病欠リスクが高いままであった。
・リカバリー群およびハイリスク群は、レジリエント群と比較し、女性の割合が高く、より高齢であった。
・すべての群において、治療開始時には同様の臨床スコアが示されたが、ハイリスク群では、治療終了後も抑うつ症状の残存が認められた。
・不安症およびうつ病のエフェクトサイズは、すべての群において中~大であり(Cohen's d=0.74~1.81)、87.2%は治療1年後には完全に職場復帰していた。

 著者らは「軌跡の異なる3つの群が確認された。女性と高齢は、治療開始時の病欠リスクの高さと関連が認められ、治療終了時の抑うつ症状の残存は、継続的な病欠を予測していた。患者の特性に合わせて治療を調整し、層別化することで、将来の患者の治療アウトカムが改善する可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)