ナッツ類の積極的な摂取が、全死亡や心血管疾患などの死因別死亡リスク低下と関連するという報告があるが、乳がんサバイバーにおけるがんの転帰との関連はみられるのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのCong Wang氏らは、乳がんサバイバーを対象に、ナッツ類の消費量と全生存率(OS)および無病生存率(DFS)との関連を分析した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年10月19日号に掲載の報告より。
本研究では、中国の大規模コホート研究・上海乳がん生存者調査のデータが用いられた。同調査では、乳がん診断後5年時点で、食事摂取頻度調査票を用いた過去1年間の包括的な食事評価が実施されている。ピーナッツ、クルミ、その他のナッツを含むナッツ類の消費量は、1週間当たりの摂取量をグラム数に換算して評価。ナッツ類の総消費量が0g/週を超える患者はナッツ類消費者、それ以外はナッツ類非消費者と定義され、さらにナッツ類消費者は≦中央値(17.32g/週)、>中央値に分類された。ナッツ類の消費量とOSおよびDFSの関連はCox回帰分析を用いて評価された。
主な結果は以下のとおり。
・診断後5年時点で食事評価が実施された乳がんサバイバー3,449例が対象。食事評価実施後の追跡期間中央値は8.27年で、252例の乳がんによる死亡を含む374例の死亡があった。
・診断後5年の食事評価時点で再発のなかった3,274例のうち、209例で乳がんの再発、転移、または乳がんによる死亡が報告された。
・初回の食事評価からさらに5年後(診断10年後)の評価では、ナッツ類消費者は、非消費者と比較してOS(93.7% vs.89.0%)およびDFS(94.1% vs.86.2%)が有意に高かった(p<0.001)。
・多変量調整後、ナッツ類消費量は用量反応パターンにしたがってOS(傾向のp=0.022)およびDFS(傾向のp=0.003)と正の相関がみられた。ナッツ類消費量>中央値と非消費者の比較では、OSのハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.05)、DFSのHRは0.48(95%CI:0.31~0.73)だった。
・これらの関連は、ナッツの種類による違いはみられなかった。
・また層別化分析では、総エネルギー摂取量が多い患者とOS(交互作用のp=0.02)および、早期(StageI~II)乳がん患者とDFS(交互作用のp=0.04)において関連性がより明白であることが示された。
・ナッツ類消費とDFSの関連について、ホルモン受容体の状態およびその他既知の予後因子による変化はみられなかった。
著者らは、長期の乳がんサバイバーにおけるナッツ類の摂取は、より良い生存、とくにDFSと関連していたと結論付けている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)