60歳以上への交互接種vs.同種接種、感染率・重症化率は/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/21

 

 日本と同様に国民の多くがファイザー社およびモデルナ社製のCOVID-19ワクチンによる1回目および2回目接種(初回シリーズ)を受けているシンガポールで、60歳以上を対象に3回目接種での交互接種と同種接種後の感染・重症者の発生状況が調査された。シンガポール国立大学のSharon Hui Xuan Tan氏らによる、JAMA誌オンライン版2022年2月11日号リサーチレターでの報告。

 シンガポールでは人口の8割以上がCOVID-19ワクチンを2回接種していたにもかかわらず、2021年9月に社会的距離と検疫についての措置が緩和され、感染者が急増した。これを受けて政府は、6ヵ月以上前に2回目接種を終えた60歳以上の成人に追加接種を受けるよう呼びかけ、30μgのBNT162b2(ファイザー社)と50μgのmRNA-1273(モデルナ社)のいずれかを選択するようにした。

 本研究では、2021年9月15日~10月31日に追加接種を受けた人を対象に、SARS-CoV-2感染率と重症化率を、シンガポール保健省に報告された公式データに基づいて分析した。症例は、有症者、無症状の高リスク労働者および濃厚接触者の検査によって特定された。評価項目はPCR検査で確認された感染および重症化(酸素投与が必要、集中治療室への入院、COVID-19による死亡)であった。

 抗体価の上昇に要する時間を考慮し、追加接種を受けた12日後に追加接種群に分類された。ポアソン回帰を用いて,初回シリーズでのワクチンの種類(BNT162b2またはmRNA-1273)別に、追加接種群と非追加接種群の感染と重症化の発生率比(IRR)を推計。共変量には、性別、人種、社会経済状態の指標となる住居形態、年齢層、2回目のワクチン接種日、調査期間中の感染力の変化を調整するための暦日別ダミー変数などが含まれていた。また、追加接種として同メーカーのワクチンを接種した人(同種接種;homologous boosted)と異なるワクチンを接種した人(交互接種;heterologous boosted)のIRRも算出された。

 主な結果は以下の通り。

・70万3,209人の対象者のうち、調査期間中に57万6,132人が追加接種を受けた。
・研究対象となったのは、追加接種群933万9,981人日、非追加接種群2,264万3,521人日だった。
・人日別では、60~69歳が59%、70~79歳が29%、80歳以上が11%で、女性が53%を占めていた。
[初回シリーズでBNT162b2を接種]
・非追加接種群で(100万人日当たり)感染:600.4件、重症化:20.5件。
・追加接種での同種接種群で(100万人日当たり)感染:227.9件、重症化:1.4件、感染確定症例のIRR(非追加接種群を対照)は0.272(95%信頼区間[CI]:0.258~0.286)、重症例のIRRは0.047(95%CI:0.026~0.084)。
・追加接種での交互接種群で(100万人日当たり)感染:147.9件、重症化:2.3件、感染確定症例のIRRは0.177(95%CI:0.138~0.227)、重症例のIRRは0.078(95%CI:0.011~0.560)。
[初回シリーズでmRNA-1273を接種]
・非追加接種群で(100万人日当たり)感染:507.0件、重症化:4.5件。
・追加接種での同種接種群で(100万人日当たり)感染:133.9件、IRRは0.198(95%CI:0.144~0.271)。
・追加接種での交互接種群で(100万人日当たり)感染:100.6件、IRRは0.140(95%CI:0.052~0.376)。
・初回シリーズでmRNA-1273の投与を受けた人の重症者数は少なく、IRRは評価されなかった。

 著者らは、短い追跡期間、mRNA-1273投与後の感染数が少ないことなどの本研究における限界を挙げたうえで、交互接種は同種接種と比較してSARS-CoV-2感染率を低下させたとしている。本結果は、追加接種の推奨を支持し、また交互接種がCOVID-19に対するより大きな予防効果をもつ可能性を示唆しているとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)