急性期および慢性期の精神症状の管理における抗精神病薬の使用は、不整脈による死亡率の増加と関連しているとされるが、心電図(ECG)モニタリングのタイミングや頻度に関するコンセンサスは十分に得られていない。米国・Zucker School of MedicineのLiron Sinvani氏らは、抗精神病薬を使用している成人患者(とくに入院患者)に対するECGモニタリングの現在の実施状況に関して調査を行った。Journal of Psychiatric Practice誌2022年3月3日号の報告。
2010~15年に8施設の医療機関で、入院中に抗精神病薬で治療された成人患者を対象に、マルチサイト・レトロスペクティブ・チャートレビューを実施した。主要アウトカムは、抗精神病薬使用後のECG実施とした。
主な結果は以下のとおり。
・調査期間中に抗精神病薬で治療された入院患者数は2万6,353例(平均年齢:61.4歳、女性の割合:50.1%、白人の割合:64.8%)であった。
・平均併存疾患スコアは1.4、入院期間の中央値は8.3日であった。
・対象患者のうち、入院中にECGを実施した患者は60.6%(1万5,977例)、抗精神病薬使用後にECGを実施した患者は41.2%であった(1万865例)。
・ECGのフォローアップを実施した患者の入院期間(中央値:11.3日)は、実施しなかった患者の入院期間(中央値:7.0日)と比較し長かった。
・ECGのフォローアップ実施率が高かった患者の特徴は以下のとおりであった。
●心不全の既往歴(オッズ比[OR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.06~1.30、p=0.002)
●抗精神病薬の多剤併用(OR:1.3、95%CI:1.24~1.36、p<0.001)
●その他のQT間隔延長リスクを有する薬剤の使用(OR:1.09、95%CI:1.07~1.1、p<0.001)
●リスペリドンの使用(OR:1.12、95%CI:1.004~1.25、p=0.04)
●QTcの延長(10ms増加当たりのOR:1.02、95%CI:1.01~1.04、p=0.003)
・入院前に抗精神病薬を使用していた患者では、ECGのフォローアップを実施する可能性が低かった(OR:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)。
著者らは「本研究では、抗精神病薬を使用している入院患者に対するECGモニタリングは、十分に行われていない可能性が示唆された。急性期治療環境におけるECGモニタリングにより、最もベネフィットが示される患者を特定するためには、さらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)