統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患は認知症と関連しているといわれているが、これらの関連を直接比較した研究はあまり行われていない。台湾・台北栄民総医院のYing-Jay Liou氏らは、重度の精神疾患と認知症リスクとの関連を明らかにするため、台湾全民健康保険データベースを用いてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、重度の精神疾患患者は対照群と比較し、アルツハイマー病および血管性認知症リスクが高いことが示唆されたとし、中年および高齢の精神疾患患者では、認知機能の変化を綿密にモニタリングする必要があることを報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年4月26日号の報告。
対象は、2001~09年に統合失調症(1万4,137例)、双極性障害(1万4,138例)、うつ病(1万4,137例)のいずれかに診断された45~69歳の患者およびマッチさせた対照群(4万2,412例)。診断時年齢に基づき4群をマッチさせた。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての認知症の発症は、2011年末までの診断データより特定した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中のアルツハイマー病リスクは、統合失調症患者および対照群と比較し、双極性障害患者およびうつ病患者でより高かった。
【統合失調症】ハザード比[HR]:4.50、95%信頼区間[CI]:2.84~7.13
【双極性障害】HR:10.37、95%CI:6.93~15.52
【うつ病】HR:8.92、95%CI:5.93~13.41
・フォローアップ期間中の血管性認知症リスクは、うつ病患者および対照群と比較し、統合失調症患者および双極性障害患者でより高かった。
【統合失調症】HR:4.55、95%CI:3.14~6.59
【双極性障害】HR:4.45、95%CI:3.13~6.31
【うつ病】HR:3.18、95%CI:2.21~4.58
・信頼区間に重なりが認められることから、各群間における統計学的な有意差は認められなかった。
(鷹野 敦夫)