子供の主体性や尊厳を尊重する幼児教育理論であるモンテッソーリ教育を、高齢者や認知症介護に取り入れたモンテッソーリケアは、西欧諸国において興奮症状の治療に有用な非薬理学的介入であることが報告されている。しかし、アジア人を対象とした研究のほとんどはサンプルサイズが小さく一貫性が認められていないため、その結果の信頼性は制限されている。中国・The Third Hospital of QuzhouのLingyan Xu氏らは、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、アジア人認知症患者に対するモンテッソーリケアは、標準ケアと比較し、とくに身体的攻撃性による興奮症状を減少させる可能性が示唆された。しかし著者らは、本研究では、身体的非攻撃行動や言葉による攻撃行動に対する有効性が認められなかったことから、身体的攻撃性に対する効果の信頼性についても、今後のさらなる検討が求められるとしている。Medicine誌2022年8月12日号の報告。
プロスペクティブランダム化臨床研究(RCT)より、利用可能なデータを抽出した。身体的攻撃行動、身体的非攻撃行動、言葉による攻撃行動のアウトカムをプールした。データソースは、Medline、Embase、Cochrane Library、China National Knowledge Infrastructure(CNKI)、WanFang、China Science and Technology Journal Database(VIP)。適格基準は、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため実施されたプロスペクティブRCTとした。独立した2人の研究者が、該当文献より利用可能なデータ(ベースライン特性およびアウトカム)を抽出した。モンテッソーリケアと標準ケアの有効性を比較するため、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)およびNurses’ Observation Scale for Inpatient Evaluation(NOSIE)を含む測定尺度を用いた。加重平均差を用いたプール分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・メタ解析には、合計460例が含まれた。
・モンテッソーリケアによる興奮症状のプールされた平均差は、標準ケアと比較し、-3.86(95%CI:-7.38~-0.34、p=0.03)であった。
・モンテッソーリケアによる各症状のプールされた平均差は、以下のとおりであった。
●身体的攻撃行動:-0.82(95%CI:-1.10~-0.55、p<0.00001)
●身体的非攻撃行動:-0.81(95%CI:-1.68~0.55、p=0.07)
●言葉による攻撃行動:0.38(95%CI:-0.92~1.68、p=0.57)
(鷹野 敦夫)