新型コロナウイルスの変異株の進化に伴い、アルファ株からオミクロン株へ、その潜伏期間が徐々に短縮していることが示唆された。また、小児および高齢患者で潜伏期間が長い傾向がみられている。中国・北京大学のYu Wu氏らは、それぞれの変異株によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の潜伏期間を体系的に評価することを目的にシステマティックレビューとメタ解析を実施。JAMA Network Open誌オンライン版2022年8月22日号に報告した。
2019年12月1日~2022年2月10日に、PubMed、EMBASE、ScienceDirectが検索され、PRISMAガイドラインに基づきレビュー担当者が適格な研究からデータを個別に抽出した。パラメータ等は、変量効果モデルによるメタ解析から明らかにされた。潜伏期間は感染から徴候や症状の発症までの時間と定義され、主要評価項目はSARS-CoV-2株ごとの潜伏期間の平均推定値とされた。
主な結果は以下のとおり。
・8,112例を対象とした合計142件の研究が含まれた。
・潜伏期間について、プールされた平均推定値は6.57日(95%信頼区間[CI]:6.26~6.88、範囲:1.80~18.87日)だった。
・アルファ、ベータ、デルタ、およびオミクロン株の潜伏期間について、それぞれ1研究(6,374例)、1研究(10例)、6研究(2,368例)、および 5研究(829 例)のデータが収集された。
・変異株ごとにみた平均潜伏期間は、アルファ株で5.00日(95%CI:4.94~5.06日)、ベータ株で4.50日(95%CI:1.83~7.17 日)、デルタ株は4.41日(95%CI:3.76~5.05日)、およびオミクロン株で3.42日(95%CI:2.88~3.96日)だった。
・年齢および重症度ごとにみた平均潜伏期間は、高齢患者(60歳以上)で7.43日(95%CI:5.75~9.11日)、小児患者(18 歳以下)で8.82日(95%CI:8.19~9.45 日)だった。また、重症でない患者では 6.99 日(95%CI:6.07~7.92日)、重症の患者では6.69日(95%CI:4.53~8.85日)だった。
著者らは、本結果は新型コロナウイルスがCOVID-19パンデミックを通して継続的に進化および変異し、さまざまな形の感染性および病原性を持つ変異株を生成したことを示唆しているとし、変異株の潜伏期間を特定することは、隔離期間を決定するうえで重要な要素だとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)