国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の主流となったオミクロン株BA.5については、従来株の感染既往があっても免疫逃避して再感染しやすいと認識されていた。しかし、早期にBA.5が優勢になった国の1つであるポルトガルにおいて、従来株の感染既往がある人におけるBA.5感染リスクを調査したところ、BA.1/BA.2の感染既往がある人は、武漢株やほかの変異株の感染既往よりも、BA.5に対する高い防御効果を有しているということが判明した。本結果は、ポルトガル・Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo AntunesのJoao Malato氏らが、NEJM誌2022年9月8日号のCORRESPONDENCEで報告した。
本研究では、1,034万4,802人が登録されている全国コロナウイルスレジストリSINAVEのデータが用いられ、2022年7月4日時点の12歳以上の930万7,996人が対象となっている。このレジストリには、臨床症状を問わず、ポルトガル国内で報告されたすべての症例が記録されている。遺伝子検査により各変異株が90%以上を占める期間を特定し、優勢期として設定した。BA.1とBA.2は流行の移行が緩やかだったため優勢期が統合された。各優勢期に初めて新型コロナに感染した人を特定し、各変異株の感染既往群および未感染群のBA.5に対する感染リスクを算出した。ポルトガルでは2022年6月1日よりBA.5の優勢期となっている。なお、2022年以前に被験者の98%以上が新型コロナワクチンの初回シリーズを接種完了しているため、感染者はブレークスルー感染と見なされる。
武漢株もしくは各変異株の感染既往者におけるBA.5の防御効果は次のとおり。
・武漢株:51.6%(95%信頼区間[CI]:50.6~52.6)
・アルファ株:54.8%(95%CI:51.1~58.2)
・デルタ株:61.3%(95%CI:60.3~62.2)
・オミクロン株BA.1/BA.2:75.3%(95%CI:75.0~75.6)
本研究により、BA.1/BA.2感染既往者は、オミクロン株以前の変異株の感染既往者よりもBA.5に対して高い防御効果があることが示された。この結果に対して著者は、BA.1/BA.2感染既往者のBA.5感染が多いことから、BA.1/BA.2感染既往によるBA.5の防御効果は非常に低いと認識されていたが、そのような認識は、BA.1/BA.2感染既往者がほかの変異株の感染者よりも多いことによるもので、研究結果に裏付けられた認識ではないと述べている。高度にワクチン接種された集団では、従来株に未感染の人と比べて、感染既往、とくにBA.1/BA.2の感染既往がある人でBA.5に感染する人は少なかったことが明らかになった。
(ケアネット 古賀 公子)