多くの精神疾患患者で抗精神病薬の切り替えが行われているが、切り替え理由や臨床記録を研究した報告はほとんどない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、抗精神病薬の切り替え理由についてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、抗精神病薬の切り替え理由は性別により異なるようであったが、多くの場合、忍容性の不十分にあることが報告された。また、切り替え理由が適切に記載されていないケースが5分の1で認められた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月5日号の報告。
1施設で抗精神病薬の切り替えを行った入院または外来患者において、切り替え理由および切り替えた薬剤の種類を明らかにするため、処方記録や処方箋の記載をレトロスペクティブにレビューした。2017年8月1日から270件に至るまで抗精神病薬の切り替えデータを収集し、検出力分析に必要な薬剤の種類および切り替え理由を抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・クエチアピンから抗精神病薬以外に切り替えられた7件を除く263件の抗精神病薬切り替え事例を分析した(患者数:195例、年齢中央値:31歳[四分位範囲:24~47]、統合失調症:36.9%、双極性障害:27.7%、統合失調感情障害:18.5%)。
・主な抗精神病薬の切り替え理由は、忍容性不十分(45.7%)、効果不十分/悪化(17.6%)であった。
・抗精神病薬の切り替え理由は、人種(p=0.2644)、年齢(p=0.0621)、保険の種類(p=0.2970)による影響を受けなかったが、性別についてはいくつかの理由に関して不均一性が認められた(p=0.004)。
・最も多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の経口剤(SGA-OAP)から他のSGA-OAPへの切り替えであり(155件、58.9%)、その理由は、忍容性不十分または効果不十分であった。
・次に多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(SGA-LAI)からSGA-OAPへの切り替えであり(11%)、その理由は、忍容性不十分、患者の好み、保険適用の問題であった。
・SGA-OAPからSGA-LAIへの切り替えは、10.7%であった。
・抗精神病薬の切り替え理由が適切に処方箋に記載されていたのは、208件(79.1%)であった。
(鷹野 敦夫)