日本人双極性障害外来患者への薬物治療に対する年齢や性別の影響~MUSUBI研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/05

 

 出産可能年齢の女性および高齢の双極性障害患者において、薬理学的治療に特別な注意を払う必要があるものの、現行のガイドラインでは明確に示されていない。とくに、出産可能年齢の女性双極性障害患者に対しては、薬物療法のリスクとベネフィットのバランスに懸念が高まる。獨協医科大学の川俣 安史氏らは、双極性障害外来患者への向精神薬処方に対する年齢および性別の影響について、調査を行った。その結果、若年女性に対するバルプロ酸とリチウムのリスクおよび安全性に関する情報が偏っている可能性が示唆され、これを修正するためのさらなる研究が求められることを報告した。また、高齢患者では、ラモトリギンよりもリチウムが処方されることが多く、高齢患者に対する薬物療法の選択においても、さらなる研究の必要性が示唆された。Annals of General Psychiatry誌2022年9月12日号の報告。

 日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」において、年齢、性別、薬物療法に関する詳細なデータを収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・研究対象は、双極性障害外来患者3,106例。
・39歳以下の若年女性に対して、バルプロ酸が25%に処方されていた。
・すべての群と比較し、若年女性に対するバルプロ酸の処方頻度および1日の投与量に、有意な差は認められなかった。
・バルプロ酸の処方頻度は、若年男性では有意に低く、中年男性ではより高かった。
・リチウムの処方頻度は、若年女性で有意に低く、65歳以上の高齢男性および高齢女性でより高かった。
・ラモトリギンの処方頻度は、若年男性および若年女性で有意に高く、高齢男性および高齢女性ではあまり高くなかった。
・カルバマゼピンの処方頻度は、若年男性で有意に低く、高齢男性でより高かった。

(鷹野 敦夫)