BA.5の中和抗体高いのは?未感染の3回接種者vs.感染後の2回接種者/感染研

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/12

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔などさまざまな要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。国立感染症研究所が9月27日に発表した研究によると、ワクチン接種や感染による抗体保有者の血清を用いて、各種変異株に対する中和抗体価の比較試験を行った結果、未感染のワクチン3回接種者は、感染後にワクチンを2回接種し、接種から半年程度経過したハイブリッド免疫を持つ者よりも、優れた中和能を有することなどが明らかになったという。

 本調査では、2021年12月~2022年2月に実施された「第三回および第四回新型コロナウイルス感染症に対する抗体保有率調査」に参加した1万6,296例から、ワクチン未接種の感染者(38例、0.2%)、感染後にワクチンを2回接種した者(146例、0.9%)、感染歴のない2回ワクチン接種者(1万2,019例、73.8%)、感染歴のない3回ワクチン接種者(1,255例、7.7%)が同定された。感染とワクチン接種回数、接種からの経過期間の組合せにより誘導される変異株に対する中和抗体価を評価するため、感染から5~7ヵ月経過した未接種感染者(19例)、最終ワクチン接種から5~7ヵ月経過した感染後2回接種者(19例)、最終ワクチン接種から1ヵ月以内のワクチン3回接種者(30例)の検体を選抜し、各種変異株に対する血清中和抗体価が比較された。中和試験では、2倍階段希釈した血清を分離ウイルス(祖先株、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.5、BA.2.75)と混合し、5日間培養後、細胞変性効果の有無により中和活性を評価した。また、中和試験の結果を用いて、祖先株およびオミクロンの各株の抗原性の違いを評価するために抗原地図が作成された。

 主な結果は以下のとおり。

・感染後2回接種者は、ワクチン未接種感染者に比べて、祖先株に対する中和抗体価だけでなく、BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても高い中和抗体価を示した。
・未感染3回接種者は、祖先株およびBA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても、感染後2回接種者に比べて、高い中和抗体価を示した。
・3回接種直後の者は、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者よりも、いずれの変異株に対しても高い中和抗体が誘導されていることが示された。
・抗原地図によると、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5は、祖先株からの抗原距離が離れており、中でもBA.5は最も祖先株と抗原性が異なるウイルスであることが明らかになった。
・3回接種者の血清において、BA.5に対する中和抗体価は、祖先株に対する中和抗体価に比べて10分の1ほど低くなっていた。

 著者は本結果について、感染歴のある者にワクチンを接種することにより、感染ウイルス株やワクチン株だけでなく、直近のオミクロン亜系統株に対しても中和能を有する抗体を誘導できるとする一方で、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者のハイブリッド免疫の液性免疫は、未感染3回接種者よりも優れているとは限らないとしている。また、祖先株と抗原性が最も異なるBA.5は、ワクチン免疫を最も回避しやすいウイルスであると考えられるため、オミクロン株対応型ブースターワクチンの導入が有益である可能性が示唆された。今後の調査では、今回検体が入手できなかった3回目接種から5~7ヵ月経過した者や、4回目接種者の血清中和抗体価の評価も重要であると述べている。なお、デジタル庁ワクチン接種記録システムによると、国内におけるワクチン3回接種者の割合は、10月4日時点で全人口の約65%となっている。

(ケアネット 古賀 公子)