双極性障害の精神症状と転帰への影響~システマティックレビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/24

 

 双極性障害(BD)患者の半数以上に認められる精神症状は、疾患経過、転帰、治療に対して悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、さまざまな研究が行われているにもかかわらず、精神症状がBDに及ぼす影響は解明されておらず、システマティックレビューはほとんど行われていなかった。インド・Postgraduate Institute of Medical Education and ResearchのSubho Chakrabarti氏らは、BD患者の精神症状の程度とBDのさまざまな側面への影響を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、精神症状は、BD患者において一般的に認められるが、それが疾患経過や治療転帰に悪影響を及ぼすとは限らないことを報告した。World Journal of Psychiatry誌2022年9月19日号の報告。

 本研究は、PRISMAガイドラインに従い実施された。1940~2021年までに公表されたBD患者の精神症状に関する研究を、6つの英語データベースより電子文献検索および手動検索により収集した。関連するMeSH用語を組み合わせて検索を行った。対象研究は、スクリーニング後に選択し、全文レビューを行った。研究の方法論的質およびバイアスリスクの評価には、標準的なツールを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・本システマティックレビューには、339件の研究が含まれた。
・半数~3分の2のBD患者は生涯に精神症状が認められ、半数弱では現在精神症状が認められた。
・BDのいずれのステージにおいても、幻覚よりも妄想の頻度が高かった。
・BD患者の3分の1は、とくに躁病エピソード中に、第1級の精神症状または気分に合致しない精神症状が認められた。
・精神症状の発生率は、双極II型障害よりも双極I型障害で多く、双極性うつ病よりも躁病または混合エピソードで多かった。
・BD患者の精神症状は、それほど重篤ではなかったが、精神病性BD患者の重症度は一貫して高かった。
・精神疾患は、主に洞察力低下、興奮、不安、敵意の増加と関連していたが、精神医学的併存疾患との関連は認められなかった。
・精神疾患は、入院率および入院期間、うつ病への転換、気分に合致しない症状を伴う転帰不良の増加と関連が認められた。
・対照的に、精神疾患がラピッドサイクラー、罹病期間の長さ、自殺リスクの増大につながる可能性は低かった。
・疾患経過や他の転帰のパラメータに対する精神疾患の重大な影響は確認されなかった。

(鷹野 敦夫)