強迫症状(OCS)は、精神疾患患者において高頻度でみられる症状であるにもかかわらず、認識および治療が不十分である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDeborah Ahn Robins氏らは、統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者におけるOCSおよび強迫症(OCD)の有病率を推定し、OCSの要因となる臨床的特徴を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、OCSおよびOCDは、精神疾患患者で頻繁に認められており、より重篤な精神医学的な臨床的特徴と関連している可能性が示唆された。また、著者らは、自動化された情報抽出ツールを用いることで、精神疾患に合併するOCS/OCDの認識や治療を改善できる可能性があることを報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月28日号の報告。
データは、South London and Maudsley NHS Foundation Trust Biomedical Research Centreのレジストリデータより収集した。対象は、2007~15年に統合失調症(ICD F20.x)、統合失調感情障害(ICD F25.x)、双極性障害(ICD F31.x)と診断された患者。OCSおよびOCDは、構造化データおよびフリーテキストより自然言語処理ソフトウェアを用いて特定した。臨床的特徴は、Health of the Nation Outcome Scalesを用いて収集した。臨床的特徴とOCS/OCDとの関連の分析には、交絡因子を考慮したロジスティック回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者数は、2万2,551例。
・OCSが認められた患者は5,179例(24.0%)であり、OCDを合併していた患者は2,574例(11.9%)であった。
・OCS/OCDは、以下の症状増加との関連が認められた。
●攻撃性(OR:1.18、95%CI:1.10~1.26)
●認知機能障害(OR:1.21、95%CI:1.13~1.30)
●幻覚・妄想(OR:1.11、95%CI:1.04~1.20)
●身体的問題(OR:1.17、95%CI:1.09~1.26)
(鷹野 敦夫)