認知症介護施設の入居者に対する不適切な抗精神病薬投与は問題となっている。この問題に対処するため、施設スタッフの教育やトレーニング、アカデミック・ディテーリング、新たな入居者評価ツールで構成された「認知症に対する抗精神病薬処方の合理化(RAPID:Rationalising Antipsychotic Prescribing in Dementia)」による複合介入が開発された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・コークのKieran A. Walsh氏らは、認知症介護施設の環境下におけるRAPID複合介入の利用可能性および受容性を評価するため、本研究を実施した。また、向精神薬の処方、転倒、行動症状に関連する傾向についても併せて評価した。その結果、RAPID複合介入は広く利用可能であり、関係者の受容性も良好である可能性が示唆された。著者らは、今後の大規模研究で評価する前に、実装改善のためのプロトコール変更やさらなる調査が必要であるとしている。Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy誌2022年10月10日号の報告。
2017年7月~2018年1月にアイルランドの大規模介護施設において、混合法による利用可能性介入研究を実施した。介護施設のスタッフおよび一般開業医によるフォーカスグループと半構造化インタビューを3ヵ月のフォローアップ期間終了後に実施し、参加者を評価した。定量測定には、介入前後の評価および向精神薬の処方率を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・2日間のトレーニング研修に介護施設スタッフ16人が参加し(参加率:21%)、一般開業医4人がアカデミック・ディテーリングセッションに参加した(参加率:100%)。
・フォーカスグループとインタビューに参加した18人は、教育およびトレーニングが自身の業務に有益であると認識し、本調査完了後も新規スタッフの教育を継続したいと回答した。
・しかし、施設入居者評価ツールの使用は限定的であった。
・参加者からは、介入を強化するための推奨事項も挙げられた。
・定期的な抗精神病薬の処方が行われていた認知症入居者の割合は、介入前3ヵ月間45%(18例)、ベースライン時44%(19例)であったが、介入3ヵ月後では36%(14例)とわずかな減少が認められた。
・認知症入居者に投与される1ヵ月当たりの向精神薬頓服処方の絶対数は、ベースライン時の90から介入3ヵ月後の69へと大幅に減少した。
(鷹野 敦夫)