せん妄などの原発性精神疾患以外の症状に対して、急性期治療で抗精神病薬が使用されることは少なくない。このようなケースで使用された抗精神病薬は、退院時およびフォローアップ時においても継続使用されていることが多いといわれている。カナダ・カルガリー大学のNatalia Jaworska氏らは、抗精神病薬処方の慣行の特徴、抗精神病薬処方と中止に対する専門家の認識、急性期治療における抗精神病薬処方中止戦略などを明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。その結果、急性期治療で専門家が認識していた抗精神病薬処方と実際に測定された処方の慣行は異なっており、また院内での処方中止戦略についての報告はほとんどないことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、抗精神病薬の有効性およびリスクを評価するためには、処方中止戦略を継続的に評価する必要があるとしている。BMC Health Services Research誌2022年10月21日号の報告。
2021年7月3日までに公表された、抗精神病薬の処方と中止の慣行、および急性期治療における抗精神病薬処方と中止に対する認識について報告した1次調査研究を、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、Web of Scienceのデータベースより検索した。プロトコール、エディトリアル、オピニオンピース、システマティックレビュー、スコーピングレビューを除くすべての研究デザインを分析に含めた。2人のレビュアーにより、データを個別または重複してスクリーニングし、要約した。
主な結果は以下のとおり。
・スクリーニングした研究4,528件のうち80件を分析に含めた。
・すべての急性期治療環境(集中治療室、入院、救急部門)において専門家が認識していた抗精神病薬処方は、ハロペリドールが最も高頻度であったが(100%[36件中36件])、測定された抗精神病薬処方の慣行では、クエチアピンが最も一般的であった(76%[36件中26件])。
・抗精神病薬の使用理由は、せん妄(70%[69件中48件])および興奮症状(29%[69件中20件])であった。
・退院時では、クエチアピンの処方が最も多かった(100%[18件中18件])。
・3件の研究で、薬剤師主導の処方中止権限、ハンドオフツール、教育セッションに焦点を当てた院内抗精神病薬処方中止戦略が報告されていた。
(鷹野 敦夫)