これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンに伴い、喘息増悪が減少したことが報告されている。しかし、制限緩和による喘息への影響についてはいまだ報告されていない。そこで、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFlorence Tydeman氏らは、行動制限の緩和が急性呼吸器感染症(ARI)の発症や喘息増悪に及ぼす影響を検討した。その結果、制限緩和によりCOVID-19の発症・非COVID-19のARI発症がいずれも増加し、それらはいずれも重度喘息増悪の発現に関連していた。Thorax誌オンライン版2022年11月23日掲載の報告。
調査は、2020年11月~2022年4月の期間において、英国の成人喘息患者2,312例を対象として実施した。顔面被覆具の使用、社会的交流の頻度、ARIの発症、重度喘息増悪の発現について、月1回のオンラインアンケートを用いてデータを収集した。上記に関する経時変化は、ポアソン一般化加法モデルを用いて可視化し、COVID-19・非COVID-19のARI発症と急性増悪の関連は、マルチレベルロジスティック回帰分析を用いて交絡因子を調整して解析した。
主な結果は以下のとおり。
・2021年4月からの制限緩和に伴い、顔面被覆具の使用の減少(p<0.001)、公共の施設や他の家庭への訪問の頻度の増加(p<0.001)、COVID-19発症の増加(p<0.001)、非COVID-19のARI発症の増加(p<0.001)、重度喘息増悪の発現の増加(p=0.007)が認められた。
・非COVID-19のARI発症は重度喘息増悪の発現の独立した関連因子であった(調整オッズ比[aOR]:5.75、95%信頼区間[CI]:4.75~6.97)。COVID-19発症もオミクロン株の発現前(5.89、3.45~10.04)、発現後(5.69、3.89~8.31)のいずれも重度喘息増悪の発現の独立した関連因子であった。
研究グループは、これらの結果から「行動制限の緩和により顔面被覆具の使用が減少、社会的交流が増加し、ARIと喘息のリバウンドが生じた。非COVID-19のARI発症、オミクロン株発現前後のCOVID-19発症はいずれも重度喘息増悪の発現に関連し、その度合いはいずれも同程度であった」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)