温熱療法は、うつ病など、さまざまな精神疾患のマネジメントに用いられる。九州大学病院別府病院の山崎 聡氏らは、日本人高齢者の温泉入浴とうつ病との関係を検討するため、アンケート調査を実施した。その結果、習慣的な毎日の温泉入浴とうつ病歴の低さとの間に関連があることが確認された。著者らは、温泉の使用が精神疾患や精神障害の症状緩和に有用であるかを明らかにするためにも、うつ病治療としての習慣的な毎日の温泉入浴に関するプロスペクティブ無作為化比較試験が求められるとしている。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。
大分県別府市在住の65歳以上の高齢者1万429人に対して、うつ病の有病率に関するアンケート調査を実施し、回答した219人を対象に長期的な温泉入浴のうつ病予防効果を総合的に評価した。うつ病歴のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
セパレート多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、うつ病歴と有意な関連が認められた独立因子は以下のとおりであった。
●女性(OR:1.56、95%CI:1.17~2.08、p=0.002)
●不整脈(OR:1.73、95%CI:1.18~2.52、p=0.004)
●脂質異常症(OR:1.63、95%CI:1.14~2.32、p=0.006)
●腎疾患(OR:2.26、95%CI:1.36~3.75、p=0.001)
●膠原病(OR:2.72、95%CI:1.48~5.02、p=0.001)
●アレルギー(OR:1.97、95%CI:1.27~3.04、p=0.002)
●習慣的な毎日の温泉入浴(OR:0.63、95%CI:0.41~0.94、p=0.027)
(鷹野 敦夫)