STRIDEレジメンにより切除不能肝細胞がん1次治療で長期生存率向上の可能性

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/09

 

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。

予後に大きく影響するのは“肝予備能”

 肝細胞がんでは簡単に手術のできないケースが多く、手術ができる人はたった2割である。ただし、他がん腫と異なり、切除不能例であってもさまざまな治療選択肢がある。全生存期間延長を目標に据え、最適な治療選択を行うことが肝要である。

 ただし、多くの選択肢を残すには肝予備能の維持が重要であり、予後に大きく影響する。加藤氏は、「肝予備能さえ保てれば、次の薬を試すことができる。複数の薬を使えるほうが予後は良くなる」と強調した。

炎症なしタイプの肝細胞がんはプライミングの強化が必要

 腫瘍細胞はCTLA-4、PD-1などが関与して誘導される免疫寛容により、免疫系からの攻撃を逃れている。免疫チェックポイント阻害薬は、この機能を阻害することで免疫系を活性化し腫瘍細胞を攻撃する薬だが、炎症の少ないがんには効きにくいと言われている。炎症が少なくてもキラーT細胞がある程度存在すればまだ有効であるが、そうでない場合は効果が薄い。炎症なしタイプが3分の2を占める肝細胞がんにおいて、免疫チェックポイント阻害薬の有効性を高めるには、プライミングの強化がまず必要である。

デュルバルマブ、トレメリムマブは免疫だけで肝がんと戦える

 デュルバルマブとトレメリムマブの併用療法であるSTRIDEレジメンは、VEGF/VEGFR阻害なしの初めてのレジメンである。

 プライミングフェーズとして、トレメリムマブがCTLA-4を介した免疫抑制経路を阻害し、T細胞の活性化を促す。そして、エフェクターフェーズで、デュルバルマブがPD-L1を介した免疫抑制経路を阻害し、T細胞によるアポトーシスを促す。両剤の併用によって、免疫反応の複数の段階で抗腫瘍活性をもたらすT細胞の活性化と機能増強が行われることで、抗腫瘍免疫を増強する。

HIMALAYA試験の概要と結果

 では、臨床試験の結果はどうだったのだろうか。本セミナーでは第III相ランダム化比較試験のHIMALAYA試験の結果が紹介された。

 本試験ではトレメリムマブの初回1回投与、デュルバルマブ4週間隔で投与するSTRIDE群とソラフェニブ投与群、デュルバブマブ投与群で、 全生存期間(OS)などを比較した。

 OS中央値はSTRIDE群で16.43ヵ月[95%信頼区間[CI]:14.16~19.58]、ソラフェニブ群で13.77ヵ月[95%CI:12.25~16.13]であり、STRIDE群でOSの有意な延長がみられた。

 STRIDE群の主な有害事象は下痢、そう痒症、発疹など。また、免疫関連有害事象の発現率はSTIRIDE群で35.8%、Grade3以上の有害事象発生率は12.6%であった。

 切除不能肝細胞がんでは、OSの延長を目標に、最適な治療選択を行うことが最も重要である。今回、トレメリムマブとデュルバルマブの併用療法が1次治療の選択肢に新たに追加された。加藤氏は、「炎症なしタイプが半数以上を占める肝細胞がんでは、まずプライミング強化が必要となる。この点において、STRIDEレジメンは理にかなったものであり、1次治療の新しい選択肢となる」と語った。

(ケアネット 溝口 ありさ)