HER2発現レベルに従って転移乳がん患者におけるT-DXdの有効性を評価し、複数時点での腫瘍検体のバイオマーカー分析を通じて治療反応と治療耐性に関わる因子を調査することを目的とした第II相DAISY試験の結果を、フランス・Gustave RoussyのFernanda Mosele氏らがNature Medicine誌オンライン版2023年7月24日号に報告した。
参加者はベースライン時のバイオプシー結果に基づき、HER2高発現群(IHC 3+またはISH+、72例)、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+、74例)、およびHER2陰性群(IHC 0、40例)に割り付けられた。
主要評価項目は奏効率(ORR)で、副次評価項目には安全性などが含まれた。その他探索的解析として、HER2発現パターンと治療反応、T-DXdの作用機序および耐性機序が調べられた。
主な結果は以下のとおり。
・ORRはHER2高発現群では70.6%(95%信頼区間[CI]:58.3~81)、HER2低発現群では 37.5%(95%CI:26.4~49.7)、HER2陰性群では29.7%(95%CI:15.9~47)だった。
・HER2陰性群の患者において、ERBB2発現が中央値未満であった患者(14例中5例[35.7%]、95%CI:12.8~64.9)は、ERBB2発現が中央値を上回っていた患者(10例中3例[30%]、95%CI:6.7~65.2)と比較して奏効率に差はみられなかった。 またベースライン検体を外部の病理学者が検査した結果、15例(48%)でHER2発現が確認された。
・治療中、HER2発現腫瘍(4例)では強いT-DXd反応が示された一方、HER2陰性腫瘍(3例)ではT-DXd反応がまったくまたはほとんど示されなかった(ピアソン相関係数r=0.75、p=0.053)。
・ベースライン検体におけるドライバー変異には耐性と有意に関連しているものはなかった(FDR補正p>0.54)。ただし、ベースライン時の89例中6例(7%)にERBB2ヘミ接合型欠失が検出され、うち4例はT-DXdに反応がなかった。
・T-DXd耐性となった検体の21例中3例(14%)にSLX4変異が検出された。
・新たな安全性シグナルは確認されていない。
著者らは、HER2発現レベルはT-DXdの有効性の決定要因と言えるが、本研究ではそれ以外のメカニズムも関与している可能性が示唆されたとまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)