強迫症は、慢性的な強迫症状の増減を伴う精神疾患であり、双極性障害に併発した強迫症の治療については、依然として困難である。イラン・Babol University of Medical SciencesのFaezeh Khorshidian氏らは、強迫症を併発する双極性障害患者の躁、うつ、強迫症の治療において、バルプロ酸ナトリウムの補助療法としてのリスペリドンおよびアリピプラゾールの安全性および有効性を比較するため、本研究を実施した。その結果、強迫症併発双極性障害に対するアリピプラゾールまたはリスペリドン補助療法は、どちらも効果的であり、生命を脅かす重篤な副作用は認められず、とくにアリピプラゾールは、リスペリドンよりも効果的な薬剤である可能性が示唆された。Health Science Reports誌2023年8月27日号の報告。
強迫症併発双極性障害患者64例を対象に、第III相二重盲検ランダム化比較試験を実施した。精神科医による診断面接は、精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)の基準に基づき行われた。強迫症、躁病、うつ病の重症度の評価には、Yale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)をそれぞれ用いた。患者は、2つの並行群にランダムに割り付けられた。両群ともにバルプロ酸ナトリウムを投与し、補助療法としてアリピプラゾールまたはリスペリドンのいずれかを投与した。データ分析には、SPSSソフトウェア(ver.22)、χ2検定、t検定、反復測定による分散分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・両群(投与量、投与期間)ともに、各評価尺度の平均スコアの有意な低下が確認された。
・両群間の比較では、HAM-D、YMRSスコアに有意な差は認められなかったが、Y-BOCS平均スコアは、アリピプラゾール群で有意に低かった(p<0.001)。
・副作用に関しては、リスペリドン群で有意な体重増加(p<0.001)、アリピプラゾール群で有意な睡眠障害(p<0.05)が認められた。
(鷹野 敦夫)