新薬の登場で変化する胃がん薬物療法の国内研究の最新情報が第96回日本胃癌学会総会で報告された。
ペムブロリズマブ+化学療法による進行胃がん1次治療の日本人サブセット
ペムブロリズマブと化学療法の併用は日本人胃・食道胃接合部がんの1次治療においてもグローバルと同様の結果を示した。
切除不能または転移を有するHER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん1次治療で良好な結果を示したペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-859試験における日本人サブセットの結果が示された。日本人サブセットは101例で、ペムブロリズマブ+化学療法群は48例、コントロールとなる化学療法群は53例であった。
追跡期間中央値28.9ヵ月における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群16.8ヵ月、化学療法群13.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.44〜1.13)、無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ+化学療法群6.8ヵ月、化学療法群6.7ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.49〜1.36)であった。奏効率(ORR)はペムブロリズマブ+化学療法群54.2%、化学療法群56.6%、奏効期間中央値はペムブロリズマブ+化学療法群18.4ヵ月、化学療法群5.4ヵ月であった。
Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ+化学療法群の41.7%、化学療法群の39.6%に発現した。Grade3以上の免疫介在性有害事象はペムブロリズマブ+化学療法群の16.7%、化学療法群の3.8%に発現した。
日本人MSI-H胃がんに対するニボルマブ+イピリムマブの1次治療
切除不能進行再発のマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)胃がんの1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブの有効性と安全性を評価するNO LIMIT試験(WJOG13320G/CA209-7w7)の結果が発表された。
NO LIMIT試験は医師主導の第II相試験で、全国75施設935例の切除不能かつ化学療法未治療の胃がんからMSI-Hをスクリーニングし、ニボルマブ+イピリムマブの介入を行った。主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)によるORRで、推定値を35~65%とした。
MSI-H陽性の割合は5.6%であった。対象は2022年8月29日までに試験に登録された29例。
BICR評価の確定ORRは62.1%(CRは10.3%)で主要評価項目を達成した。病勢コントロール率(DCR)は79.3%であった。Waterfallプロットでは深い奏効が示された。PFS中央値は13.8ヵ月、OS中央値は未達で12ヵ月OS率は80%であった。
Grade3以上のTRAEは41.3%で、安全性プロファイルは既報どおりであった。
進行胃がんにおけるラムシルマブのbeyond PD
進行胃がんにおいて血管新生阻害薬の継続療法を評価した第III相RINDBerG試験の結果が発表された。ラムシルマブのbeyond PD療法は主要評価項目であるOSを達成できなかった。
血管新生阻害薬のPD後の継続は、さまざまながんで有効性が報告されている。胃がんでもRAINFALL試験の事後解析で2次治療としてのラムシルマブのPD後投与が良好なOSに関連していると報告されている
RINDBerG試験の対象はラムシルマブおよび化学療法抵抗性で既治療の切除不能胃・食道胃接合部腺がん。登録患者はラムシルマブ+イリノテカン(RAM+IRI)群とイリノテカン単剤(IRI)群に割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORR、安全性などであった。
OS中央値はRAM+IRI群9.4ヵ月、IRI群8.5ヵ月で、調整HRは0.91、p値は0.37と主要評価項目は未達であった。PFS中央値はRAM+IRI群3.8ヵ月、IRI群2.8ヵ月で、HRは0.72、p値は0.001とRAM+IRI群で有意に優れていた。ORRはRAM+IRI群22.2%、IRI群15.0%であった。DCRはそれぞれ65.6%と52.7%で、オッズ比は1.71、p値は0.02とRAM+IRI群で有意に優れていた。
主な有害事象としては、両群とも好中球減少、白血球減少、食欲不振、倦怠感などが多くみられた。RAM+IRI群の26例、IRI群の32例が毒性中止となっている。
(ケアネット 細田 雅之)