未治療の進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫(LTB-FL)では、診断後にすぐに治療を行わずに経過を診る、いわゆる無治療経過観察(watchful waiting、WW)が標準治療とされているが、高腫瘍量(HTB)への進行や組織学的形質転換といったリスクが懸念される。
一方、リツキシマブ単剤療法は、LTB-FLに対する初回治療の選択肢としてその有効性が示されているが、同剤を開始する最適な時期は明らかになっていない。そこで、未治療の進行期LTB-FL患者を対象に、WWに対する早期リツキシマブ導入の優越性を検証する無作為化第III相JCOG1411/FLORA試験が行われた。なお、同試験は、2024年6月に事前に計画された2回目の中間解析により、JCOG効果・安全性評価委員会から早期終了が勧告された。同試験の結果を東北大学の福原 規子氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。
・試験デザイン:無作為化第III相比較試験
・対象:未治療の進行期・超低腫瘍量FL(Grade 1〜3A)
※本試験では、GELF規準による低腫瘍量FLを、超低腫瘍量(腫瘍の最大長径が5cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節が2領域以下、胸腹水貯留なし)と、中腫瘍量(最大長径5cm以上7cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節3領域、重篤な胸腹水貯留なし、のうち1つ以上該当)の2つに分け、超低腫瘍量を試験の対象とし、中腫瘍量をリツキシマブ投与規準と定義した。
・試験群:リツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)(RTX群、144例)
・対象群:無治療経過観察 (WW群、148例)
両群とも中腫瘍量に進行した場合はリツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)投与
・評価項目:
【主要評価項目】無イベント生存期間(EFS)
(イベント:高腫瘍量(HTB)への進行、細胞傷害性化学療法±放射線療法の開始、組織学的形質転換、または死亡)
【副次評価項目】無細胞傷害性化学療法生存期間、無組織学的形質転換生存期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、全奏効割合(ORR)、有害事象など
主な結果は以下のとおり。
・2016年12月〜2023年3月にJCOGリンパ腫グループ54施設から292例が登録された。
・第2回中間解析(データカットオフ2023年12月)の観察期間中央値2.5年時点で、主要評価項目であるEFSにおいて、中央値はRTX群6.9年に対しWW群4.5年であり、有意にRTX群で改善した(HR:0.625、95%CI:0.425~0.918、片側p=0.0078)。
・EFSのイベント内訳は、HTBへの進行(RTX群18.8%、WW群32.4%)、組織学的形質転換(RTX群8.3%、WW群12.8%)、化学療法の開始(RTX群11.8%、WW群8.8%)などであった。
・PFS中央値はRTX群、WW群とも3.0年で両群間に差はみられなかった(HR:0.911、95%CI:0.666~1.247)。
・ORRはRTX群70.8%、WW群3.4%であった。
・OS中央値は両群とも未到達、3年OS割合はRTX群97.5%、WW軍98.5%で両群間に差は見られなかった(HR:0.908、95%CI:0.329〜2.506)。
・無組織学的形質転換生存期間中央値は両群とも未到達、同3年割合はRTX群91.4%、WW群87.4%であった。
・主なGrade2~4の非血液毒性(>5%)はインフュージョンリアクション(RTX群24.1%、WW群8.9%)、上気道感染症(RTX群6.4%、WW群2.1%)、高血圧(RTX群5.7%、WW群1.4%)であり、主なGrade3~4の血液毒性(>5%)はリンパ球減少であった(RTX群11.4%、WW群8.5%)。
以上の結果から福原氏は、未治療の進行期超低腫瘍量FL患者において、リツキシマブ早期介入は高腫瘍量への進行や化学療法の開始時期を遅らせることが示され、OSや組織学的形質転換に関しては長期のフォローアップが必要であるものの、リツキシマブ早期投与は未治療の進行期超低腫瘍量FLの初期治療に推奨されると結んだ。
(ケアネット 細田 雅之)