心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、新たな薬物治療の選択肢が求められている。米国・アラバマ大学バーミンガム校のLori L. Davis氏らは、PTSDに対するブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の有効性、安全性、忍容性を検討するため、第III相二重盲検ランダム化比較試験を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年12月18日号の報告。
2019年10月〜2023年8月に米国の臨床試験施設86施設で実施された。PTSD成人外来患者を対象に、ブレクスピプラゾール(可変用量:2〜3mg/日)+セルトラリン(150mg/日)併用療法とセルトラリン(150mg/日)+プラセボ治療との比較を行った。1週間のプラセボ導入期間後に11週間の二重盲検ランダム化実薬対照並行群間期間(21日間のフォローアップ調査)を設けた。主要アウトカムは、ランダム化後(1週目)から10週目までのClinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)合計スコア(20のPTSD症状の重症度を測定)の変化とした。安全性評価には、有害事象を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・1,327例の適格性を評価し、878例がスクリーニングに失敗したため、416例(平均年齢:37.4±11.9歳、女性:310例[74.5%])をランダム化した。
・試験完了率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で64.0%(214例中137例)、セルトラリン+プラセボ群で55.9%(202例中113例)であった。
・10週目のCAPS-5合計スコアは、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群でセルトラリン+プラセボ群よりも統計学的に有意な改善が認められた(最小二乗平均[LSM]平均差:−5.59、95%CI:−8.79〜−2.38、p<0.001)。
【ブレクスピプラゾール+セルトラリン群:148例】ランダム化時の平均:38.4±7.2、LSM変化:−19.2±1.2
【セルトラリン+プラセボ群:134例】ランダム化時の平均:38.7±7.8、LSM変化:−13.6±1.2
・すべての主な副次的エンドポイントおよびその他の有効性エンドポイントの達成も確認された。
・ブレクスピプラゾール+セルトラリン群(205例)において治療中に5%以上で発生した有害事象は、悪心12.2%(25例)、疲労6.8%(14例)、体重増加5.9%(12例)、傾眠5.4%(11例)であった。
・上記有害事象のセルトラリン+プラセボ群(196例)の発生率は、悪心11.7%(23例)、疲労4.1%(8例)、体重増加1.5%(3例)、傾眠2.6%(5例)であった。
・有害事象による治療中止率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で3.9%(8例)、セルトラリン+プラセボ群で10.2%(20例)であった。
著者らは「ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法は、セルトラリン+プラセボと比較し、PTSD症状の有意な改善が認められ、PTSDの新たな治療法になりうる可能性が示唆された。ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の忍容性は良好であり、安全性プロファイルはブレクスピプラゾールの既存の適応症におけるものと同様であった」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)