地中海式ダイエット(全粒穀物、果物、野菜、魚、健康的な油脂類を中心とする食事)は心臓の健康に多くのベネフィットをもたらすことが知られている。しかし、例えば、家族との食事や午睡、地域社会との強い絆などの食事以外の地中海式のライフスタイルも健康に良いのだろうか?
地中海から1,500マイル(約2,400km)以上離れた英国に住む中高年に、食事も含めた地中海式のライフスタイルを取り入れてもらったところ、がんや心血管疾患、その他の原因で死亡するリスクが低減することが明らかになった。
この研究結果は、米国心臓協会の疫学・予防・生活様式・心臓代謝健康会議(EPI|Lifestyle Scientific Sessions 2023、2月28日〜3月3日、米ボストン)で発表された。研究を主導したマドリード自治大学(スペイン)のMercedes Sotos-Prieto氏は、「この研究から、地中海以外の地域に暮らす人々でも地中海式のライフスタイルを取り入れることは可能であり、健康的なライフスタイルの一部になり得ることが示唆された」と述べている。
地中海式ダイエットが心筋梗塞や脳卒中のリスク低下など、心血管疾患の予防につながることは、過去の研究で明らかにされている。今回の研究では、身体活動や休息、社会的習慣、社交などの食事以外の地中海式のライフスタイルが、イングランド、スコットランドおよびウェールズ在住の中高年11万799人(40〜69歳)に及ぼす影響が検討された。これらの人々は、集団ベースの多施設共同研究であるUKバイオバンクへの参加者であり、2009〜2012年の研究登録時にがんと心血管疾患がなく、2020年まで追跡されていた。
地中海式のライフスタイルの遵守度は、MEDLIFE指数(Mditerranean Lifestyle Index)を用いて評価した。MEDLIFE指数は、食事内容(13項目)、食事習慣(7項目)、その他のライフスタイル因子(6項目)の3区分について問うもの。食事習慣には、間食や食事への塩分追加の習慣、精製穀物よりも全粒穀物を選ぶかなどに関する質問が含まれる。また、その他のライフスタイル因子には、社交性に関する質問として「家族や友人と食事を取っているか」、社会習慣に関する質問として「誰かと一緒に散歩に行くなどの身体活動を行っているか」「家族や友人と会う頻度はどの程度か」、休息に関する質問として「昼寝と夜間の睡眠時間はどれくらいか」などが含まれている。
中央値で9.4年の追跡後、MEDLIFE指数のスコア別にがん、心血管疾患、その他の全死因による死亡率を比較した。その結果、地中海式のライフスタイルを忠実に守っている人ほど、がんまたはあらゆる原因による死亡リスクが低いことが明らかになった。具体的には、スコアに応じて4群に分けたうちのスコアが最も高い群では、スコアが最も低い群に比べて全死亡リスクが29%、がんによる死亡リスクが28%低かった。3つの区分それぞれのスコアの高さは、がんによる死亡リスクと全死亡リスクの低さに関連しており、その他のライフスタイル因子のスコアが高い人では、心血管疾患による死亡リスクも低かった。
米コロンビア大学、睡眠・概日リズム研究教育拠点の代表であるMarie-Pierre St-Onge氏は、「この結果は、地域や社会との関わりが健康に果たす役割の重要性を明らかにするものだ」と述べる。同氏は、地中海式のライフスタイルが他者との関わりを伴うものであることを指摘し、「この研究により、身体活動以外のライフスタイルにもっと目を向けるべきことが明示された」としている。一方、同氏は、地中海式のライフスタイルといえば、ゆったりとした暮らしを思い浮かべるが、今回の研究では、ストレスの影響について深く検討されていないことを指摘している。
[2023年3月1日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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