人工知能(AI)の心エコー画像解析能力は、専門スタッフ(超音波検査士)より高いことを示唆するデータが報告された。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のDavid Ouyang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に4月5日掲載された。
この研究では、3,495件の経胸壁心エコー検査の画像データを用いて、AIと超音波検査士のそれぞれが左室駆出率を評価。その評価結果を心臓専門医が見比べて、どちらの方が優れているかを検討した。心臓専門医は、評価結果のレポートがAIによるものか超音波検査士によるものかを知らされていなかった。この研究は、心臓病学領域で初のAI画像診断に関する、盲検化された無作為化比較試験だという。
その結果、心臓専門医はAIの評価結果に同意するケースの方が多く、AIの評価結果に修正を加えた割合は16.8%にとどまっていた。一方、超音波検査士の評価結果は、その27.2%が心臓専門医によって修正された。また、心臓専門医は、示されたレポートがAIによるものか超音波検査士によるものかを区別することができなかった。
この結果についてOuyang氏は、「機械が人間を打ち負かしたようなものだ」と述べている。ただし、「これは、コンピューターが超音波検査士に取って代わるという意味ではなく、AIによって超音波検査士の読影に要する時間を短縮できることを示唆している」と付け加えている。超音波検査士は心エコー画像を基に左室駆出率を計算するが、AIは過去の大量の画像データを基に、正確な左室駆出率を効率良く割り出す方法を自律的に構築していく。Ouyang氏らの研究グループは現在、このAIモデルについて、米食品医薬品局(FDA)承認を取得することを計画している。
本研究には関与していない専門家も、AIの可能性に期待を寄せている。米メイヨー・クリニックの心臓専門医であるPatricia Pellikka氏は本研究を、「非常に素晴らしく重要な研究」と高く評価。超音波検査士の業務負担を減らすだけでなく、経験の浅い超音波検査士のトレーニングにも役立つのではないかと述べている。なお、同氏は左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の診断に有用な、FDA承認を受けたAIモデルの開発に携わった経験を持つ。同氏によるとAIの可能性は診断のみでなく、例えばエコー検査の際に最適な撮像方法をガイドする機能の付加にも応用できるという。
米国心エコー図学会(ASE)副会長でカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授のTheodore Abraham氏も、「AIには大きな可能性があり、検査スタッフや心臓専門医のワークフローを効率化し、測定精度を向上させ得る」とする。一方、米クリーブランド・クリニックで心臓MRI検査部門を統括しているDeborah Kwon氏は、AIに期待をしつつも懸念を指摘する。「AIは、学習用に与えられたデータ以外のことは判断できない。また、AIがどのように学習して評価結果を割り出しているのかをわれわれは知ることができない。よって、品質と安全性の確保のために、人間による監視が常に必要とされる」とのことだ。
[2023年4月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら