米国では糖尿病のある妊婦が増加していることを示すデータが、米疾病対策センター(CDC)発行の「National Vital Statistics Reports」5月31日号に掲載された。過去5年の間に、糖尿病のある妊婦の割合は27%上昇したという。理由として、肥満者と高齢出産の増加が考えられるとのことだ。CDC傘下の国立健康統計センター(NCHS)のElizabeth Gregory氏らの研究によるもの。
Gregory氏らは、出生証明書を用いて2016~2021年に米国内で出生した全ての新生児を把握し、その母親の医療データを収集。妊娠前から存在していた糖尿病(prepregnancy diabetes mellitus;PDM)の有病率の推移を検討した。その結果、PDM症例数は2016年の3万3,829人から2021年には3万9,736人へと17%増加していた。これを出生1,000人当たりで比較すると、2016年が8.6人、2021年は10.9人であり、27%増となる。
PDM有病率はBMIが高い妊婦ほど高いという傾向も認められた。具体的には、BMI18.5未満の妊婦では出生1,000人当たり2.4人、18.5~25未満では同4.5人、25~30未満では8.8人であり、30以上では21.5人だった。また年齢との正の関連もあり、20歳未満では同4.3人、20~24歳は7.0人、25~29歳は9.2人、30~34歳は11.1人、35~39歳は16.3人であり、40歳以上では23.2人だった。
このほかに人種/民族による顕著な差も認められた。PDM有病率が最も低いのは非ヒスパニック系白人であり、出生1,000人当たり8.7人だった。それに対してアメリカ・インディアンやアラスカ先住民は同28.6人と最も高かった。非ヒスパニック系アジア人は12.5人だった。
この報告について、米レノックス・ヒル病院のEran Bornstein氏は、「糖尿病患者数の増加は大きな社会的関心事だ。以前にも今回の研究結果と同様のデータが報告されたことがあるが、糖尿病を有する妊婦の増加傾向が現在もなお進行中であることが分かった。糖尿病予防に関する豊富な知見があるにもかかわらず、これまで行われてきている公衆衛生対策が、この懸念される傾向の歯止めとして十分に機能していないようだ」と述べている。
また、米ロングアイランド・ジューイッシュ・フォレストヒルズ医療センターのSarah Pachtman氏は、「妊娠する前に糖尿病を有していることは、母児双方に合併症を引き起こす可能性があるため、報告された結果は憂慮すべきことだ」と話す。同氏によると、糖尿病があって、その管理が不十分な状態で妊娠が成立・進行した場合、妊娠高血圧腎症や羊水過多、胎児発育不全、死産、先天性欠損症、特に心臓や脳、脊髄の先天性欠損症などのリスクが増大するという。同氏は、これらの周産期合併症のリスクを抑えるために、「妊娠前に糖尿病の有無を確認し、糖尿病と診断された場合には、可能な限り血糖値を良好にコントロールしてから妊娠を計画すべきだ」と解説している。
[2023年6月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら