片頭痛に苦しんでいるなら、イブプロフェンを買いに行くのではなく、処方薬の使用についてかかりつけの医師に相談する方が良いかもしれない。米メイヨー・クリニックの神経専門医Chia-Chun Chiang氏らは、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤、制吐薬などの処方薬は、イブプロフェンと比べて急性期の片頭痛に対する効果が高いことが示されたとする研究結果を、「Neurology」に11月29日発表した。Chiang氏は、「片頭痛の治療では、トリプタン製剤を重度の頭痛発作に対する使用にとどめておくよりも早期の段階から使用を考慮すべきことが確認された」と説明している。
片頭痛に苦しんでいる人たちは、ズキズキとした拍動性の頭痛のほか、光や音に敏感になったり、吐き気や嘔吐、さらには思考力の問題などを経験することがある。Chiang氏によると、現在、片頭痛には多くの治療法があるが、それらの有効性を直接比較したデータは少ないという。
そこでChiang氏らは今回の研究で、2014年6月30日から2020年7月2日の間に、スマートフォンのアプリの利用者27万8,006人から報告された、合計で311万9,517回の片頭痛発作について調べた。このアプリには、ユーザーの片頭痛発作の頻度やトリガー(誘因)、症状、使用した薬剤の有効性などをモニタリングできる機能が備わっている。研究参加者は、片頭痛に対して薬剤を合計で477万7,524回使用していた。これらの情報に基づき、Chiang氏らは7つの薬剤クラス〔アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、トリプタン製剤、鎮痛薬の併用、エルゴタミン製剤、制吐薬、オピオイド〕に属する25種類の薬剤について解析し、各薬剤の相対的な有効性を推定した。
その結果、イブプロフェンと比べて有効性が高い3つの薬剤クラスのトップ3は、トリプタン製剤(イブプロフェンを1とした場合の平均オッズ比4.8)、エルゴタミン製剤(同3.02)、制吐薬(同2.67)であることが明らかになった。
また、25種類の薬剤を比較したところ、有効性の高い片頭痛治療薬のトップ3は全てトリプタン製剤で、最も効果が高かったのはエレトリプタン(同6.1)であり、次いで、ゾルミトリプタン(同5.7)、スマトリプタン(同5.2)の順だった。研究参加者の評価によるこれらの薬剤の有効率(薬の使用によって効果が得られた確率)は、同順で78%、74%、72%だった。これに対して、参加者の報告に基づいたイブプロフェンの有効率は42%であった。さらに、アセトアミノフェンの有効率はイブプロフェンを下回る37%で、その有効性はイブプロフェンと比べて17%低いことが示された。このほか、片頭痛治療薬として広く使用されているアスピリン、アセトアミノフェン、カフェインを組み合わせた治療は、イブプロフェン単剤と比べて有効性が69%高いことなども示された。
Chiang氏は、米国神経学会(AAN)のニュースリリースで、「片頭痛の急性期治療薬を使用しても効果が得られない人が、この研究を通して、片頭痛に有効な治療薬の選択肢は他にも数多くあることを知ってくれるのなら、われわれも嬉しく思う。この痛みを伴う消耗性の疾患の治療法について、ぜひかかりつけ医に相談してみてほしい」と述べている。
[2023年11月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら