植物性食品をベースとする健康的な食習慣によって、2型糖尿病の発症リスクが大きく低下することを示唆する研究結果が報告された。ウィーン大学(オーストリア)のTilman Kuhn氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes and Metabolism」1月号に掲載された。遺伝的背景や肥満などの既知のリスク因子の影響を調整後に、最大24%のリスク差が認められたという。
植物性食品ベースの食事スタイルは、健康に良く、かつ環境負荷が少ないことを特徴とする。またそのような食事スタイルは、2型糖尿病のリスク低下と関連のあることも知られている。Kuhn氏らは、健康的な植物性食品ベースの食事スタイルが2型糖尿病リスクを押し下げる、潜在的なメカニズムを探る研究を行った。
研究には、40~69歳の一般成人を対象とした英国の大規模コホート研究であるUKバイオバンクのデータが用いられた。11万3,097人の研究参加者を12年間前向きに追跡したところ、2,628人が新たに2型糖尿病を発症。食生活が健康的な植物性食品ベースか否かを評価する指標(healthful plant-based index;hPDI)の第1四分位群(スコアの低い下位4分の1)を基準として、年齢や肥満、身体活動量、遺伝的背景などの既知の2型糖尿病リスク因子を調整した上で発症リスクを検討した。なお、hPDIは新鮮な果物や野菜、全粒穀物の摂取量が多いほどスコアが高くなる。
多変量Cox回帰モデルでの解析の結果、第4四分位群(スコアの高い上位4分の1)は、2型糖尿病発症リスクが24%低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.76(95%信頼区間0.68~0.85)〕。媒介分析からは、BMIがこの関連性の28%を媒介し、ウエスト周囲長も28%媒介していることが示された。そのほかに、糖代謝の指標のHbA1cが11%、脂質代謝の指標の中性脂肪が9%、肝機能の指標のALTが5%、γ-GTが4%を媒介。また、炎症の指標であるC反応性蛋白、腎機能の指標のシスタチンC、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、尿酸がそれぞれ4%ずつ媒介していた。このことは、体重や内臓脂肪の管理および糖代謝や脂質代謝が良好であること以外に、肝臓や腎臓の機能が良好であることも、2型糖尿病発症リスクの低さに関与していることを意味している。
hPDIとは反対に、精製穀物の摂取量が多いなどの非健康的な食事スタイルを評価する指標(unhealthful PDI;uPDI)を用いた検討からは、第1四分位群に比べて第4四分位群は2型糖尿病発症リスクが37%高いことが明らかになった〔HR1.37(同1.22~1.53)〕。また媒介分析から、ウエスト周囲長が17%、中性脂肪が13%、BMIが7%、この関連性を媒介していることが示された。
Kuhn氏によると本研究は、「植物性食品ベースの食事スタイルの健康への影響を、代謝関連指標と臓器機能のバイオマーカーを媒介因子として設定し、それらの関連の程度を明らかにした初の研究」だという。結果として、「植物性食品ベースの食事スタイルは、単に体重や内臓脂肪の増加を抑制するにとどまらず、炎症の抑制、腎臓や肝臓の機能の維持・改善を介して、2型糖尿病リスクを低下させることが示された」と、結論付けられている。
[2023年12月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら