心房細動のアブレーション治療後の再発に、歯周病が関与していることを示唆するデータが報告された。アブレーション治療のみを受けた人に比べて、歯周病の治療も受けた人では、心房細動の再発が61%少なかったという。広島大学保健管理センターの宮内俊介氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月10日掲載された。同氏は、「歯周病の適切な管理は心房細動の予後を改善する可能性があり、その恩恵を受ける人が世界中に多数存在しているのではないか」と述べている。
心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなるために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。人口の高齢化を背景に心房細動が増加しており、米国では2030年までに患者数が1200万人以上に達すると予測されている。心房細動に対する治療としては、不規則な心拍を引き起こす原因となっている箇所を焼灼する、血管カテーテルを用いたアブレーション治療という手法が普及してきている。
一方、口の中の健康状態が全身の健康状態と関連のあることが知られている。しかしこれまでのところ、歯周病が心房細動のリスク因子の一つとは認識されていない。宮内氏らはこの点について、前向き非無作為化試験により検討した。研究参加者は、アブレーション治療を受けた心房細動患者288人。このうち97人が、アブレーション治療後に歯周病の治療も受けることに同意していた。
アブレーション治療から507±256日の追跡で、70人(24%)が心房細動を再発した。交絡因子を調整後、歯周病の治療を受けた患者群はアブレーション治療のみを受けた患者群に比べて、心房細動の再発リスクが約6割低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.393(95%信頼区間0.215~0.719)〕。また、心房細動を再発した群は再発しなかった群に比べて、歯周病の重症度が高かった〔炎症のある歯周組織の面積(PISA)が456.8±403.5対277.7±259.0mm2(P=0.001)〕。
この結果について宮内氏は、「歯周病治療が心房細動の再発リスクを大きく下げる可能性が示されたことに驚いた」と語っている。米国心臓協会(AHA)によると、「炎症が起きている歯周組織から、細菌が血液中に侵入して全身に慢性的な炎症が生じる。その結果、2型糖尿病リスクが高まるとともに、心臓や脳の血管の炎症を介して動脈硬化が進行し、心臓発作や脳卒中の発症に至る可能性がある」という。ただし、心房細動のリスクに影響が生じるメカニズムは不明であり、宮内氏らはその点の解明のための研究を進めていることを、AHA発のリリースの中で述べている。また研究者らは、「心房細動の患者に対して歯周病の検査と治療を受けることを推奨すべきだ」と提案している。
[2024年4月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら